301 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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301    

「巣」  スロープの脇に設えられた、よく刈り込まれた緑の茂みに蜂たちは巣を築いた。大家さんが出掛けようとした私を呼び止め指で差し示した。二人でしばらく巣の様子を見ていた。  この場所を選んだ理由があったのだろう。長い脚と触覚を頼りに、彼らは忙しなくあたりを飛び回っていた。  一枚のタオルが消えた。見下ろすと階下のベランダに落下していた。  階段を降り、1階の部屋のベルを鳴らした。応対した若い女と挨拶を交わし、手渡されたタオルを受け取り、礼を言ってドアを閉めた。  断裁された箱の片隅にそれぞれの営みがあった。 「少年」  夜の列車に乗り込んでいた。  窓に流れる暗い街の顔、黒い車窓に投射された、古い白黒映画を少年は見ていた。  雨に侍と農民たちはぬかるみ、矢と刀を腕に、煙と脚に混じりあう。馬は眼を剥き横たえ、敵も味方もしっかり貫かれた。そして旗はなびいていた。空を仰ぐ老侍の、最後の言葉はなんだったろうか。互いの階級に生きた、戦の国の義侠。時代の物語、であったろうか。  作戦を遂行する長の耐え忍ぶ、そろわない隊列に檄が迸る。  夜の列車に乗り込み、窓に流れる暗い街の顔を、目を。 「日」  降り続いたのだろう。降り続き、アスファルトを石は打ちつけていただろう。  暁の光、まぶしい、白い朝が立っていた。  焦げついた鉄塊と、街と私と並列になり通過した車両。同乗者たちの軽口と流れなかったラジオ。一日の始まり。窓の外を見ていた。熱をくすぶらせる昨日。明日のための燃料を求めた。  フロントガラスの向こうに鴉の群れが待っている。  人を消し去る街路の上に、たわむ新しい電線の下に、体温を元手に擦り込ませた、数と無知に暮れ歩き出す影たち、石の中の焔、ゆらめき。


301  ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 1151.4
お気に入り数: 3
投票数   : 1
ポイント数 : 0

作成日時 2021-05-08
コメント日時 2021-05-10
#現代詩
項目全期間(2025/04/06現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
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閲覧指数:1151.4
2025/04/06 21時46分02秒現在
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    作品に書かれた推薦文

301  コメントセクション

コメント数(2)
くにと
くにと
作品へ
(2021-05-08)

硬質な文体とストーリーの飛躍。そして最終連での着地…とても魅せられる作品です。

1
湯煙
くにとさんへ
(2021-05-10)

くにとさん ありがとうございます。 とくに硬質な文体は意識はしませんでしたが、最後の「日」は硬いですかね。やはり少し浮いてしまったかなと。要推敲の感がありますね。

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投稿作品数: 1