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地球色
いまだに大学の思い出を引きずっていた私は、掘立ての勉強机に座って破かれたコンクリートの天井を見上げながら流れてくる雲の絵を描くのが当時から好きだ。大学入学と共に購入した中華製のペンタブ(ペインティング・タブレット)をマックブックに純正アクセサリを鎹に接続してから、小指のラインに沿って非接触用の手袋を嵌めた。その最中に目があった明烏が、なんだか悪魔的な装備ね、などと言ってきたものだから私の青春は決定的な不幸へと落ちたのかもしれない。空洞のスタイラスペンを握って今日も雲の絵を描く。制作を続けていくうちに地球には色が付いていないことを知った。一枚絵を描き終えて私にぴったりな悪魔的な色をした珈琲を作るために砕かれる豆のことを考えている。机に置かれたサークルの集合写真で隣に写った三つ編みの女の子はとっくに死んだらしいのに写真の中では凛としていること、そして隣にいる自分とよく顔が似ていると言われていたこと、二人ともそれを実は快く思っていなかったことなどを次々思い出した。大きな口を開けたミルの中に乾いた豆と写真を溢す。(そういえば、家にあるものとそっくりな物をチョコで作って、それがチョコか実物か当てるゲームを昔、テレビでやっていたな。何色の何、だっけ。いやそれは全く違う話だな)。滅裂した写真の白い割れ目から燻された地球の香りがして、予報通りの雨が降り出し、パソコンの中の絵が濡れた。
地球色 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1005.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2021-05-02
コメント日時 2021-05-02
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
タイトルがいいですね。
1何色の何、が、どこ中のダレ?みたいに聞こえました。詩を読んでいて、色彩を操る姿が見えたので自由自在なのかしらと。言葉の一つ一つが繊細で破けてしまいそうです。 悪魔的な珈琲を作るために砕かれる豆の事を考えている、考える事が自分には同感する部分がありつつ、疑問を感じている作者の佇まいが雲間に映ります。
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