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夜に狭い部屋の中で
夜に狭い部屋の中で座ってじっとしていると何も聞こえない 何も聞こえない遠くから やがて水の湧く音がしてくる みずのわく みずの ゆるゆるゆる とぽとぽとぽ ぽきゅん? ぽきゅん? 湧く音がしてくる 聞こえる 聞こえない 目を覚ます。 静かに湧き出でる。水が部屋で満たされる。部屋が水で満たされる 指先からかえるになれ かえるになれ さかなになれ 膨張した 青い粘膜 むらさきの ちがうみどりの うすい緑の柔らかい膣 違う 毛細血管 毛細血管? 毛細血管 先細る糸 血の伝う 先 指 指先 指先から爪はがせ、骨は薄茶色、ぴろりと細く 抜き出せ血管 細い、細いね、揺れる 目の前で、ふりこ、おもりは ない とおくとおく 見えない目で見上げるとしてんがある、ふりこはゆれる、血管でできた振り子! 喜ぶ ちゅるちゅる水は流れてきて 満たし 満たせ 渦を巻くこの部屋 シンバルが煽って昇りつめ くだれ! 頭からざぶんと水を浴びる 水が今満たされる(なかで)(どこのなかで?)(わたしの中で)(部屋の中で)(なかで)(なかで)(どこで?)(なかで)(とにかくなかで)(なかで)(なかで)(なか)(なか)(な)(な)( )( ) …… 新月がようやく上がった 途端にどこか遠くから さっき水が来たほうから りゅりりゅり りゅりりゅり 光が 光が つきのひかりが ふねが ちいさなふねが 静かに静かに顔を上げると そこは再び小さな部屋で もはや水など何処にもなく 手のひらを開けたり閉じたり して 私は正常な身体を取り戻した ぬっぺりと青い 青いなにか なにか冷たさが 冷たさが 伝わってくる 皮膚から ひふから 目が醒めて 水は青く新月は昇り 正常な これが正常な夜だ これが正常なわたしだ これが正常な 正常な窓の外 黒々と明るく 青い化け物が 夜が夜がこちらを覗いている
夜に狭い部屋の中で ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1032.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-09-18
コメント日時 2017-11-06
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「新月がようやく上がった 途端にどこか遠くから~」のところが好きだ。私は月の周期を気にするほうで、何かを始めるなら、新月と決めている。また、満月には気を付けている。正気を失いそうな場や人へは近づかないようにしている。何かそれを思い出した。
0ひたひたと押し寄せて来る気配・・・部屋が水で満たされる、のはともかく、〈水が部屋で満たされる〉言葉が先に生まれたのか、感覚が先に生まれたのか・・・ここで肌が感じている質感は、部屋が感じる質感でもあり・・・部屋は個体の境界、cell(細胞壁)の感じる境界を暗示するものでもある、のでしょう。胎内回帰願望、そこで人ならぬもの、にまで還元され、そこからまた新しく生まれ出る肉体を幻視(幻覚)しているのでしょうか。言葉の陶酔的な連なりが印象に残る作品でした。
0三浦さん、まりもさん、コメントありがとうございます。長いこと気付かなくて返信せずにいてすみません。部屋が細胞だというのは書いてて気付かなかったので新鮮に感じました。人になれない人未満のものを最近自覚しながら書いています。それから、この詩は目が頑張って書きました。読んでくださってありがとうございます。
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