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椅子と沈黙
更地に群生するサボテンがあり 日向ではひざを引っ掻いたりするけれど 物陰にはどこにもいない 木陰などにもいない ぽっかり空いた更地は賑やかで 冷たい物陰が来るとうせる 死んでしまうのではない 例えば雲の下にはいられないだけ サボテンたち あなた達に ひっかけておいた糸が解かれていて ひっそり地面に残されていたのは 更地に夜が あったからだろう だれでも知っている 暖かい川原は石ばかりで 地面のように線はひけないこと サボテンの針なら髪のけより多いこと よく晴れた川原にほどよい椅子があれば 男も女も腰かけるということ 川原は針ばかりあって糸はないので 何かが紡がれたなら それは嘘である それはきっと嘘である さわがしい針が椅子に現れ 丸呑みにして見えなくした 男はぼうしを脱いで 女にかぶせ 女はぼうしを脱いで なにか言おうとして 腕を垂れたまま ふたりは 川原にのまれた
椅子と沈黙 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 771.8
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ポイント数 : 0
作成日時 2017-09-14
コメント日時 2017-09-23
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
静を表現している椅子 現れる糸 意図もせず 他人を傷つけてしまうサボテン 川にのまれていく二人 伝達する言葉 詩を伝えたいのか 感じたいのか 誠意に文字を見つめる作者の心は自分には感じました。 もぐらの鼻先。好きです。
0面白いなぁ、と、何度も立ち止まりながら読みました。 〈物陰にはどこにもいない〉物陰はどこにもない、ではない。何を、誰を探しているのか。 〈冷たい物陰が来るとうせる〉物陰、が、やって来る、という不穏。ぽっかり開いた更地に、日が射したときに訪れる賑やかさ。何者かの気配の充満。雲が覆い、陰が訪れると、その賑やかな気配たち、とでも呼びたいなにかが、消えてしまう。そんな、繊細な観察眼を感じました。 夜になると、サボテンの針は獣の毛のように和らいで、サボテンたちは地面から足を抜き出し、腕をからめてダンスを踊る・・・そんな奇妙で面白い気配の記憶が、日差しを浴びた瓦に染み込んでいる。そんなイメージで楽しませていただきました。
05or6さん コメントありがとうございます。 椅子がいななくことほど 常識なことはないのである 言葉なら。 川は流れるかもしれないが 流れたりしない川原に 人がのみこまれたって ニュースの取材は来ないのである。 読み書きは不思議で、伝えたり感じたり理解したり、そういうことが含まれるけれども、この詩がなんなのかは、よくわからないでいます。カンタンに詩は書かれますが、詩をカンタンにかくわけにはいかないのかもしれません。
0初読のとき、わたしは熱にうなされていました。 内臓を揉んでいるかのような感覚でした。 それはそれは心地の良い時間だったのです。 くりかえし読み返した病み上がり、川原に赴くとそこにはイスはなく 男も女もおらず、ただ裸の小学生が泳いでいるだけ。 それでも「溺れないで」と願わずにはいられない。 だからきっと、サボテンの針も見つけられるのでしょう。
0こんにちは。 詩は、「私は」とか「あなたは」とかで,テキストを引っ張っているのが 多いけど、それを使わないと、 詩って、こんなにスマートでカッコよくなるのかなと、 新しさも感じました。 一人称で詩を書く僕には、とても新鮮でした。
0読んでいて心地よい文章でした。 沈黙の中に何が含まれているか、掬いたくなる詩とも思いました。
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