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死と儀礼
鍵を失くしたから、 泡立つ不安と、 かすかな安心。 深夜の交差点に広がりはない。 そこにすら不可侵のルールがあるように、 もろい肉体もまた、支配されている。 かつては存在した蛋白を形成しながら、 なおも流れを狭窄していく、 四車線の血管。 うっすらと影を落とす鎖骨と鎖骨、 その中心に弱々しく縛りつけられていた鍵。 エナメルのような肌、小さく尖った乳房。 延々と自壊を繰り返し続けてきた指先は、 いま、 7セグメントディスプレイの [23:59:59]と[00:00:00]の間、 か細い声よりもはるかに細やかな切り取り線に、 優しく手向けられている。 縁石に垂れ落ちる液体と、その跡。 一滴、一滴と岩肌を削るうちに、 いつか鍵は現れる。 点字ブロックは金木犀の化石だから、 無機的な点滅に煽られる。 掠れた横断歩道の上を、 ぬるいぬるい影が歩いていく。 なおも狭窄する、血管。
死と儀礼 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1329.3
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 2
作成日時 2021-03-11
コメント日時 2021-04-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
うまく言えないけれど人間の有機物としての無機物的な表現がひたすら好きです。
0くおんさま、コメントありがとうございます。 コメントいただいてふと思いましたが、人間って有機物に見えたり無機物に見えたりすることがありますよね。ちょっと不思議です。 励みになる感想をありがとうございました。
0>鍵を失くしたから、 >泡立つ不安と、 >かすかな安心。 冒頭から好きでした。 昼間はバンバン車の往来がある幹線道路では少なからず事故はあるし、深夜のしぃんとした道路に死が潜んでいるような不気味さを感じました。幹線道路って確かに血管っぽいですね。 >なおも狭窄する、血管。 真っ直ぐ伸びた先が遠くの暗がりに集結しているような奥行を感じました。ホラー映画とかにある怖いけど目が離せない感覚を覚えました。「狭窄」という言葉がまた、そんな息苦しさを感じさせるのにピッタリですね。
0杜 琴乃さま、コメントありがとうございます。 冒頭、気に入っていただけたようで嬉しいです。 また、最終行に関してもお褒めいただき光栄です。 「奥行」という評価は非常に興味深いと感じました。自分でも掘り下げてみたい効果だと思います。 励みになる感想をありがとうございました。
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