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蛋白石のねむり
乱雑に重ねられた手紙に ぽつぽつと雨が降りはじめ 境界を失くした紙片は 月曜日の集積所で 収集を待つ月刊誌の断面に似てくる 昨夜、思い立って一括りにした恋愛ドラマは 明け方の湿気を吸って 鍵を失くした日記帳のように清潔だ (菫色の月光が注ぐとき蛋白石のねむりは静かに/饒舌になる) 週末のラインを操る 指先だけに顕れる Lamé 所謂、みずうみのねむる蛋白石は てらてらとして 月のあかるい間に秘密を呟く 誰にも触れない 生まれそこなった手紙のように 折り目をひろげた便箋は 恥ずかしげもなく罫線を伸ばし どこまでも白く ただ眩しいうたた寝をする さらさら さらさら 霧がかる湖畔を いま発ったのは誰でしょう 呼び止める隙もなく さらさら いってしまったのです 呪われた水鳥のように 静かに/饒舌に さらさら さらさら さらさら 鳥たちはかつての羽の色を覚えているだろうか 薄灰色の 小遣いで買った安価なペンの文字は 躊躇った端と端だけが嘴のように消えずにいる 『もうじき真白なシャツを着ます 膨らんだ胸に並ぶプラスチックの釦は 手指の傷よりきっぱり赤いタイが隠して 隠されているあいだだけ 白蝶貝になるンです』 なにもかも暴かれてしまう前に 手づから傷をつけて アセトンでひたひたの 毛羽立つコットンで包み (魔法を)溶かす ささくれに滲みる痛みを我慢しても尚 ひとつぶ残った Laméは 静かに/饒舌に てらてらと みずうみにねむる蛋白石のように 慎ましく 反射する
蛋白石のねむり ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1248.8
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 4
作成日時 2021-03-06
コメント日時 2021-03-12
項目 | 全期間(2024/11/23現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
一人の少女だった女の一コマであると解釈します。 醜いアヒルの子だった女は真っ白なシャツを着てオパールネイルを塗り、そして落とす暮らしに生きる。そんなところであると。 あまりに情緒的なもので読み解くのに1時間かかりましたが、とても美しい映像が浮かぶ作品です。 「静かに/饒舌に」は、現実的には音のない世界、擬音の2つを同時に表す技法でしょうか。であるなら面白い発想ですね。
0丁寧に読んでいただきありがとうございます。マニキュアって子供の頃すごく憧れていて、100円均一でやたらと買っては休日になる度に塗っていました。そして律儀に日曜日の夜には落とすのですが、そういうのを楽しんでいた時が懐かしいです。今は面倒でとてもできません。 スラッシュって色んな意味がありますよね。一応ここでは、「改行」では無い、とだけ書かせていただきますね。 コメントありがとうございました!
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