宿場町の夏 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。

硬派な作品

萩原朔太郎や中原中也のエッセンスを感じます。

千治



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宿場町の夏    

風が吹けばまた一人。雨だれにアメフラシが宿場町を歩いている。黒い外套に高山帽、死者の魂を求めている。村は祭りだ。火の玉が青い燐光を散らして、子供たちの花火の中に踊りこむ。修行僧が鈴を鳴らしながら火渡りをしている。祭りには死人が混じっていないか。それから鬼と。 そろそろ、彼岸花の季節。村の道祖神の社でお祭りをやっています。金魚すくい、赤いりんご飴。祭りに入り込んだ、黒い影。ついて言っては駄目だよ、彼は彼岸の人。あめふらしと言ってね魂を集めて売り歩いている人だよ。鬼の一種なのさ。退治できるのはね、鬼やらいだけだから。 まほろば。家に棲みついた猫。やがて二股に。赤い猫の目。闇に光っている。あの三叉路に気をつけろ。その先は行き止まり、一寸先は闇。光る爪を見たくて手を伸ばしたら、地蔵菩薩が瀑布で攫って救ってくれた。光明。 風が吹けば、また一人。旅に出る。あてどない、帰ることのない旅。死出の旅。這いよる、黒い影。あめふらし。きっと切なくて、また一人。宿を一緒になった寝言を言っている旅の僧侶に声をかけたら、夢の中に取り込まれた。仏様がさかさまになって、逆さ真言を唱えていた。悪夢。  夢明ける さくらおにの たぐる赤い 糸に絡まれ 殺される夢 忌み日に わが魂送り 卒哭日 もう一度次の世でもと お百度通い 夏の世に 蚊帳の中に子供 魂閉じ込めんと 8月さなかの 夏の供養 遠き日に、忘れてきた黄色い麦わら帽子。雨の中で、人を待つ。さ迷い歩く迷宮の終わりのない道。あなたは誰ですか?街角に夏を告げる雨、彷徨う人はやがて自分をも忘れて、形のない想いはあてどなく。息をするたびに、すべてを忘れて過去へ還るのです。懐かしい人には会えましたか?


宿場町の夏 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 3
P V 数 : 1302.8
お気に入り数: 0
投票数   : 2
ポイント数 : 7

作成日時 2021-02-24
コメント日時 2021-02-28
#現代詩
項目全期間(2025/04/07現在)投稿後10日間
叙情性44
前衛性00
可読性22
エンタメ11
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント77
 平均値  中央値 
叙情性1.31
前衛性00
可読性0.71
 エンタメ0.30
技巧00
音韻00
構成00
総合2.32
閲覧指数:1302.8
2025/04/07 01時03分44秒現在
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    作品に書かれた推薦文

宿場町の夏 コメントセクション

コメント数(3)
カオティクルConverge!!貴音さん
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(2021-02-26)

シンプルに和風な言葉がそれほど出来ないので 最初から最後までそれで書けるのはすげぇです。 個人的に見慣れてないワードが多いので疲れましたが それでも可読したくなる魅力があります。 読んで見えてくる映像の雰囲気も良しです。

0
福まる
福まる
作品へ
(2021-02-26)

想像したのはこの世とあの世がつながっている村で祭りがあってにぎやかな人々の裏で命のやり取りをしている人と鬼の姿です。この詩の書き手の方は「凄い想像力だ」と思いました。

0
ほば
作品へ
(2021-02-28)

アメフラシ、が妙に眼に止まりました。色々と詰め込まれているのだけれど、最終行にあるように懐かしいものに出会った気がした。恒川光太郎の『夜市』とか漫画、『鬼切丸』とか。このテンポや詰め込みで読ませ切るのは大変だと思うけど、読めてしまう軽みがあるように感じます。

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投稿作品数: 1