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書かざる言わざる、雄弁に水銀を
__Q.貴方はいつの日から感情を「あえて」隠すようになったんですか? A.別に隠してるつもりはないです。 Q.それでもある時から「やめましたよね」? A.そうですね。 Q.あなたたちの作品や応援してくれていた人の気持ちはどうなるんですか? A.uるr_a! 夢を見た。 白い部屋。 私はベッドに固定されて。 横には 人影 が母のように優しく座っていた。 その人影は私に意味もなく問うてくる。 戦争の意義から始まり、 挙句には創作の概念について。 ただ意味のない会話を繰り返した後。 そこで意識を失った。 Q.「自分では無く世界が悪いんだ」という言葉が流行ってますよね? A.そうですね。 Q.何か言いたいことがありそうな顔をしてますが? A.ノーコメントで。 Q.前なら答えてたじゃないですか? A.ワタシはただ たいだkde. その 人影 は答えが欲しいのではなく。 私を揺さぶっているように思えた。 私が書くのを辞めた理由。 全てのものに蓋をして忘れた理由。 言ったところで感情ごと通じる訳がないのに。 語彙力がない 表現力が稚拙 世界観が安い ずらずらと現れる 「私も同じこと思ってました」 の隊列 口を縫うことにした。 鼓膜を破ることにした。 全てが嫌だった。 世界が悪いんじゃなくて 単にお前らと私が悪いだけだよ Q.何かコメントはありますか? A. 。 Q.そうですか。では貴方のこの文章は正確に解釈されることは無いということになりますが、よろしいですか? A. 。 Q.残念です。では今までの作品はどうしますか? A.delete Q.承知しました。また何処かで。 A. 夢を見た。 自分が深い海の中に沈むという非常にありきたりなものだ。 よく見ると文字が浮かんでいた。 小さなものから成立しない破片、 きちんと単語として成立している明朝体。 海の青の深いコントラストと 対峙するかのように文字は白く光っていた。 降りて、どうか降りて。 静かに奥へ奥へ、文字に誘われる。 底にたどり着いた時、骨が落ちていた。 その骨は鯨の骨のように見られたが 骨の中に小さな粒が入っていた。 ふわっと目の前に浮かぶ文字たち。 それはかつての私が書いた者たちだった。 「そんなところに居たのか」 息もできない中、泡だけが浮かぶ。 「それで良い」 と願えた。どうかおやすみなさい。 文字はじっと私を見つめると最後に 「わたしたちをうんでくれてありがとう」 「くるしいけどありがとう」 とだけ言っていた。 上へ上へ、私は海から逃げるように流れゆく。 誰も海の塩水と涙の違いなどわからない。 そんなことを考えて、水面から顔を出す。 月が綺麗に咲いていた。 遠くでは白い雪の中、こぎつねが震えながら母きづねと震えていた。 そう、それはかつて私が作った世界だった。 ああ、逃れられないのか。 A.そう、貴方は逃げられない。口をどんなにつむごうと言葉は自然に紡がれる。過去の自分からは逃げられない。 Q.例えどんなに辛くて辱められようとも? A.勿論。それが貴方なのですから。 目覚めるといつもの部屋に居た。 なんだ夢か、夢見が相変わらず悪いだなんて思いながら。口の中がしょっぱかったのは涙のせいか海水のせいなのか最早わからないし、理解する必要もなかった。 ただ、それでいい。 君たちが報われるのならば。 だから私はここに居る。 君たちが最初に生まれた場所で 君たちの始まりを語ろうじゃないか__。 手記はここで途絶えている。
書かざる言わざる、雄弁に水銀を ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 2876.2
お気に入り数: 1
投票数 : 1
ポイント数 : 2
作成日時 2021-02-22
コメント日時 2021-03-15
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
あまり偉そうな事は言えませんが、登場人物はなぜ筆を折ったんでしょうか、想像としては妬み、やっかみに遭ったぐらいしか思いつかないのですが、どうでしょうか?
0コメントありがとうございます。それは主格テーマであり、ここで言ってしまうとあれなのでオブラートに包むだけにしておきます。 彼は色々書いた末に確かにファンもつきました、応援してくれる人も居ました。ただ、同時に批判する人も居ました。それだけならよかったのです。彼が1番嫌いだったことは、自分の作品は自分にとってはあまりにも稚拙で馬鹿らしいのにそれが素敵だと作品に同情する人間が現れることでした。それを勝手に解釈されることで自分の作品を他人のアイデンティティに利用されていると感じました。そして同時に彼に書かれた作品は批判されるだけされて泣いていたそうです。 現場からは以上になります。
0いわゆるパンフレットとか案内に載っているQ&Aというのは、「よくある質問」を予め想定した上でつくられたもので、あたかも最適解であるかのように載っているのですが、それは果たして正解なのかと。この作品内におけるQ&Aはそうした「正解」とはではなく、単に「私」と「人影(インタビュアー)」による「問い」と「答え」の繰り返しであり、それが何かに導くというものではありません。これは後の「その人影(インタビュアー)は答えが欲しいのではなく。/私を揺さぶっているように思えた。」という二行からも伺えます。 一行目から感情を「あえて」隠すことという問いが投げられていますが、「問い」というのも純粋にわからなくて問うこともあれば、きっと相手はこう返すだろうと想定した上で投げる問いもあったりします。この作品内では、この後者にあたる問いなのかなと。こうした問いが投げられること自体、問う側と問われる側との関係性がある程度濃くないとできないものです。 いつからかあえて感情を隠すという問いが的確であるように見えるのは、後に「前なら答えてたじゃないですか?」という問いがあるからです。前なら答えていたことも今となってはあえて隠してしまう、だからこそ「ワタシはただ たいだkde.」と、「~~~たい」という欲望の感情を露わにしない。でも、内容はわからなくても何かしらの希望や願いを秘めているということが露わになっています。しかし、「言ったところで感情ごと通じる訳がないのに。」と自らが自らを規定するようにしていることで、もしかしたら隠すようになったのだろうと。 「この文章は正確に解釈されることは無い」というのは、ドキッとしますね。コメントする以上、どうしても読み手の視点があり、何かしら色味を帯びた解釈が伴ってしまうもので、そもそも「正確に解釈されること」とは何ぞやと考える次第です。先ほどの「言ったところで感情ごと通じる訳がないのに」という言葉と重ねれば、そもそも「正確に解釈されること」もないのかもしれないと。ただ、少しだけ「正確に解釈」するとしたら、「言ったところで感情ごと通じる訳がないのに」という想いは、「私が書くのを辞めた理由」や「全てのものに蓋をして忘れた理由」について述べられた一行であるということで、あまり援用しすぎるのはよくなかったかもしれません。 その後、「かつての私が書いた者たち」が海の底に沈んでいる場面。印象的だったのが「わたしたちをうんでくれてありがとう」「くるしいけどありがとう」というセリフ。「私が書いた作品は私のこどもです!」という言説を目にすることがあり、僕自身にはそんな感覚はなくて、赤の他人ぐらいだと思っているのですが、これもそれも作者が作品をどう思うかという言説ばかりで、作品が作者をどう思うかという視点。作者と作品の主従関係みたいなものって、奢りかもしれないなあと。 終盤に「A.Q.A.」の三行があるのですが、今までの「Q.」の「人影(インタビュアー)」が「A.」の私を呼びかける際に「貴方」という人称を用いていたことから、この三行では「A.」が「貴方」という人称を使っていて、「Q.」と「A.」の役割が逆転しているんですね。「私」がいくらあえて感情を隠そうとも、その奥を見透かすようにして「口をどんなにつむごうと言葉は自然に紡がれる」と告げており、それが「どんなに辛くて辱められようとも」、その運命とでも言えるかのようにして「勿論」と述べるのは、やはり「A.」。これが「私」にとっての「A.」≒「正解」であるかのようなお告げ。 ところで、「口をどんなにつむごうと言葉は自然に紡がれる」というのは、こうしてコメントを寄せられたりすることだったりもするわけですね。過去の作品であろうとも、どこか(例えば深い海の底)に形さえ残っていれば、それについて語られてしまう可能性があるということ。 「手記はここで途絶えている。」という最終行もドキッとしたのですが、この書き手が手記を途絶えさせた以上、その意志を読み手が引き継ぐとしたら、この続きを描くのは、その手記を途絶えさせたその人だけでしかないのだろうと。これもまた「正確な解釈」ではないとして、もしかしたら「水銀を」どうかされてしまうかもしれないと思いつつのコメントになります。
0コメントありがとうございます。今回のテーマは夢の中の夢、どこまで創作者を揺さぶれるかなど様々な題材や色々詩というよりはストーリー性のあるような何かに仕立ててみました。インタビュアーは私にとって誰なのか、その私にとって何処までが夢なのか。様々な考察&長い文章をありがとうございます。ちなみにここでの海はネットの海ともかけているので、作品は自分の中で消していても実際には埋もれているだけなんですね。
0作品、というか文字そのものに引き込まれました。 文字はじっと私を見つめると最後に 「わたしたちをうんでくれてありがとう」 「くるしいけどありがとう」 とだけ言っていた。 堪らなく胸が苦しい、愛情を感じました。 私の胸にずっと納めておきたい詩でした。 出会わせてくれてありがとうございます。
0コメントありがとうございます。 創造者にとって例え作品は思い出したくないものでも作品は覚えているのかもしらないですね。書かれた時の感情や痛みを抱きながら彼らは静かに眠るのです。
1言ってしまうと、作品に限らず人間の営為全てが「そう」なのではないかと思います。
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