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ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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大人と子供の主題テーマ    

 人生を説くほど年老いてはいないのに、この人は既に悟ったような人で、焚き火のオーラをふわふわゆらり、漂い纏わせ生活している。 ――大人になれば分かるとか言われてばかりだったわ。そういうものだ、仕方がないって。 ――嫌だったわねあの言葉。はぐらかされてるみたいで。 「大人ってなんであんなに偉そうなの?特に若い大人は」  カラン。サンダルが地面を撫でる音がした。  机の下で足をブラつかせなんだかご機嫌そう。その手に握られたグラスには茶色い泡が浮かぶコーラ。前に黒ビールというものを見たときコーラに似てると言ったら、子供には分からない味だよと笑われてちょっとイラついた。  ストローから口を離しながら、そういうものよと億劫そうに返事した瞬間、ハッとこちらの瞳を見つめてきた。 ――何より嫌なのはね、自分も同じセリフを言ってしまうことなの。  声に皺が寄ったと例えたら丁度いいのかも。悩み事なんてこれっぽっちも抱えてなさそうな笑顔を浮かべてたけども、実は純度の高い葛藤を懐に隠し持っているらしい。 「……コーラって黒ビールみたいだよね」  グラスの中では、四角い氷たちが、琥珀色に例えるには濃いすぎるコーラを乱反射して、鈍い輝きが散らばってる。 ――確かにそうね。ちょっと似てる。でもちょっと違う。 「何が」 ――コーラのほうが綺麗。  この人はやっぱり味方だ。なんだか安心できた。この人はずっと前から違うと分かってた。何が違うのかは言葉には出来ないけど。 「カッコいいね」  カラン。氷がグラスを撫でる音がした。 ――そういうフリするのが上手なの。上手すぎてもう剥がれなくなっちゃった。  じゃあ、今その瞬間の表情も、それこそドラマで見るようなわびしい瞳も、虚しい口元も演技であつらえた作品なんだろうか。 ――『セケンズレ』って聞いたことある? 「世間とずれてるってこと?」  言うと思ったと小さく笑われたけれど、でも心地いい笑い方だった。 ――世間とれる。社会に揉まれると似たようなもの。この氷みたいに、角が取れていくこと。  指でチョンと押し込まれた氷たちはもう小石のような塊になってる。 ――まだ尖ってんのよアンタは。  いきなり、尖り気ある口調に変わった。いや……変えたんだ。 ――アタシはさっさとまぁるくなりたいの。擦れるだけじゃ間に合わないから自分で酸の水槽に飛び込んだの。 ――アタシはただ自分が楽しいことを、好きなものを追いかけてただけ。 ――変な目で見られるせいで世間と共感できないのも、そのせいで世間に爪に立てるのもこりごり。あんなの寂しいだけよ。  呟く程度のか細い声色でポツリとこぼした弱音。 ――寂しいだけなのよ。  椅子を引く音も立てずにすらりと立ち上がってこちらを見下ろし、最後に見つめてきたその瞳は、すわっていた。 ――いつか分かるよ、アンタも。



大人と子供の主題テーマ ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 6
P V 数 : 1041.9
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 1

作成日時 2021-02-05
コメント日時 2021-02-06
#縦書き
項目全期間(2025/04/04現在)投稿後10日間
叙情性00
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可読性11
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音韻00
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叙情性00
前衛性00
可読性11
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技巧00
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閲覧指数:1041.9
2025/04/04 16時52分43秒現在
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    作品に書かれた推薦文

大人と子供の主題テーマ コメントセクション

コメント数(6)
福まる
福まる
作品へ
(2021-02-05)

「子供」と「アタシ」という二人の登場人物が出てきますがひょっとして同一人物で年齢だけ違うのではないかと思いました。最後の「いつか分かるよ、アンタも」でそう思いました。歴史は変えられないけど「子供」に忠告したくて「アタシ」が正体を隠してやってきたんじゃないかと思います。あと「セケンズレ」は私のことを言われてる気がしてぐさりときました。

0
作品へ
(2021-02-05)

言葉選びが綺麗で、氷やコーラの描写からひんやりとした透明なイメージが作品全体を通して感じられるようでとても良かったです。「大人」に自己を投影するような「子供」の視点から、徐々に「大人」のイメージが「子供」から乖離し始めるような構成も面白かったです。

1
宵月
作品へ
(2021-02-05)

上手すぎて、剥がれなくなった、そんな気持ち、今あります。 ストレートな気持ちを透明な、綺麗な言葉で表現されていて、読んでいて、共感できます。

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みやび
みやび
福まるさんへ
(2021-02-06)

コメント頂き嬉しいです。 自分では同一人物という設定は設けていませんでしたが、福まるさんのコメントで自分もそうとしか読めなくなってしまいました(笑)むしろ福まるさんの方が正解に近かったような気がします(笑)

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みやび
みやび
まさんへ
(2021-02-06)

こんにちは。 『ひんやりとした透明なイメージ』は意外です。書いた本人はむしろ淀んだ雰囲気だなぁ〜なんて思っていたので(笑) 構成については「カラン」を変化のきっかけにしてみました。

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みやび
みやび
宵月さんへ
(2021-02-06)

個人的な体験ではなくて、たくさんの大人たちが経験したことのある感覚だけを書き出してみたろうと試みたので、共感できる部分が多いようですので上手く出来たなとにやにやしてます。

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投稿作品数: 1