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家と夢だけが
愛されている者にだけでなく、 凌辱されている者にだって、燈火の光と熱の揺らめく家と夢があったのだし、 今も、そしてこれからも、あるだろう。 だがしかし、家と夢とは別に、僕らが故郷と呼ぶ、 もっと広い舞台のようなもの、永久に土壌であるようなもの、 人間が作ったようではないもの、 それは一つ、ずっと分かちがたくただ一つのもの、 それは確かに存在するのに、一人歩けば、 いや二人で歩こうと幾人で歩こうと、 今のこの静けさはなんだろう、 何かに侵されたのだろうか、 歩いても歩いても、そこに残したはずの足跡は消えている。 人は簡単に言う、時は過ぎるのだと、人間は変わるのだと、 舞台であるものも、土壌であるものも、所詮外的で自然のもの、 絶えず自由に何かを捨て何かを加え、 その相貌と内容を変えているのだと。 僕はそんなに淡泊になれない、 いつでも寄り添っていて欲しい、 今までに通った、あらゆる時間、あらゆる場所、あらゆる場面に。 時には楽しく、時には険しく、僕と言葉を交わした者たちよ、 今どこにいるのだ、 さまざまな模様の熱さや冷たさを感じたはずなのに、 感じたことは何もかも贋物だったかのようだ、 気のない冷ややかな挨拶、故郷の町よ、 一度離れてしまったことがいけなかったのか、 なぜこんなにひんやりとして静かなのか、言ってくれ、 生きることは、離れてゆくことなのか、 でも離れてゆかないもの、 不可侵の家と夢だけは、 僕の心の中で、火炎を散らしながら騒いでいるというのに。
家と夢だけが ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1183.3
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2021-02-05
コメント日時 2021-02-07
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「陵辱」されていた「僕」が復讐するために故郷へ戻ってきたと想像しますが、「家と夢」に複雑な想いを抱いているであろう「僕」は多分私は「家も夢」も奪われて復讐に及び放火したと想像します。この詩を読んで悲しい気持ちになりましたが 、詩自体はなんか舞台が明治、大正、昭和初期を思い起こさせて結構好きです。
1作品って、読者さんに思いもかけないことを伝えるのですね。あらためて、おもしろいなと感じました。でも、4分の1くらい、発信者である私の念慮が伝わったような気がします。私の頭にあったのは、恵まれた家庭に育った人のことだけではなく、より強いニュアンスで、問題のある家庭に生まれてしまった人のことでした。たとえば虐待を受けている人、そんな人にだって温かい家庭があらんことを願って書きました。社会について少し考えて書いた、エッセイ風の詩でもあります。
0変わっていくものと変わらないものについて語られているように感じました。慣れ親しんだ故郷の町ですら自分を置いて、あるいは疎外して、知らないものになっていく中、「家と夢」に絶対的な心の拠り所を求めようとしているのかもしれないと。希薄になっていく人間関係やSNSなどに顕著な加速しすぎているように思える流行り廃りなど、特にコロナの時期で集まることが悪、関係を結んだりコミュニケーションを取ることが悪とされているような時勢に思えるのでそういった不安を抱えている人は多いのかなとも想像します。だからといってマスク要らないやコロナは風邪までくるとやり過ぎかなとも思いますが、この作品のように上手くそういった心に寄り添えないかなとも思います。作品解釈とかではなく感想の後半が自分の妄想みたいになってしまいすみません。現状の寂しさや不安を嘆くだけでなく、最後に意志や能動性を感じさせるところはこの作品のらしさが出ているようでとても良いと感じました。
1英語で言えば単にhomeという一言かもしれない、でもその一言には多大な意味があるように思います。僕のhome、僕と関係なく変化するhome、homeに幸せがあった人にとってのhome、homeに悲しい記憶のある人にとってのhome、homeと呼べる場所が無い人にとってのhome、など。 第一連の中で私が「凌辱されている者」という言い方で表現した人にとってhomeとはどんな場所なのか、もしかしたら虐待された場所かもしれない、何の夢も未来に描けなかった場所かもしれない、大人になれずにそこで殺されてしまった場所かもしれない。現実、温かいhomeばかりではないことに読者さんには思い当たっていただきたかったのと、みんなで温かいhomeを持てるようにしようよ、という希望も、この詩を書いた動機の一つです。
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