雨だりいなぁ
でも、冬の雨っていいじゃない?
そうか?
通りすがりの若い夫婦と思われる男女の会話だ。「冬の雨っていいじゃない?」とはどういう意味だろうか。雪よりマシという意味だろうか。だが、ぼくの住む街はほとんど雪が降らない。たまに雪が降るとぼくなんかは珍しくて窓辺で眺めるのが楽しかったりする。冬の雨の日なんてありふれてるってのに、それが彼女にはいいらしい。ぼくはこれは面白い発見だと思って、ひとつ詩にしてみようと試みたわけだ。
家に帰ってからぼくは
滅多にノートに書いたりしないけど、
冬の雨
とシャープペンシルで書いてみた。
冬の雨は
と接続詞を付けたところで一旦手を止めて
冬の雨を思い浮かべた。
冬の雨は
長い眠りの中の
短い夢だ
と思い浮かぶままに続けてみた。
ぴちゃぴちゃと
水たまりで愉快に
跳ねる雨粒に
地中の生命たちが
心地よい夢を見る
とさらに続けたところでまた手を止めて、自ら連れてきた「地中の生命」という言葉に目を向けてみる。
たとえば
カエル
彼は雨音に
梅雨を
思い出す
アジサイの葉に
カタツムリがはい
雨のリズムに合わせて
仲間たちと合唱する
そんな夢を見てたりして。
夢か。
冬の雨は
長い眠りの中の
短い夢だ
「でも、冬の雨っていいじゃない?」と声に出してみる。傘をさして歩いてみたくなって、ノートに書きかけの詩を残し、ぼくは出かけた。雨が傘を叩く音。冬が眠りの中なのだとしてと、考えてみた。
だとしたら
ノートの端くれに書いた
冬の雨の詩は
終えることのない
夢を見ている
どんよりとした
雨雲の下
歩くぼくの足の下
地中では
みんな等しく
眠りについていた
ふと
立ち止まって
耳をすませば
雨音に
混じって
カエルの
寝言が
聞こえる
気がした
作品データ
コメント数 : 6
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作成日時 2021-02-01
コメント日時 2021-02-03
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
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2024/11/21 22時59分43秒現在
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事実と夢想を行き来する記述が心地よいです。
1散文部分と改行部分のバランスがいいと思いました。
1よんでいただきありがとうございます! 心地よく感じてももらえて嬉しいです!
0読んでいただきありがとうございます! バランスとれてたみたいでよかったです。 ありがとうございます!
0なんとなく題名が「冬の雨」なのに雰囲気が夏なのはって梅雨と出てますね、感想としては、一つの詩に二つの季節が描かれていて幻想的だと思いました。
1読んでいただきありがとうございます! 雰囲気が夏なんですね。確かに意識的に梅雨という言葉を入れました。 幻想的になっててよかったです。ありがとうございます!
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