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天井にドア
袋開けたスナック 昨日の夕飯の残り 読みかけでもう読んでないマンガ なぜか聖書 使い方のわからないヘッドホン 汚れたマーガリン ずっと昔旅行で買ったオカリナ すべてが色あせてゆく 何もできずに年月ばかり過ぎて 夢はみんなただの夢になるんだって心の中つぶやいて 何か楽しい仕事をしたかったんだ 疲れてベッドに倒れこんだ 真夜中の高い高い天井に ドアがあるんだ ぽつり白い光を届けてくれる ドアが開いているんだ そしてそのドアは遠すぎて 絶対に届かないんだ いつも闇の中見つけて 涙が出る程 見つめてしまうんだ もう何を言ったってどうせろくでもない ただのツイートまたはつぶやきでしかない この思いをわかってくれる人なんてどこにもいない 小さい頃から夢があって でも夢があっただけで何もしなくて ノーベル賞とれるかもなんて 天才になったつもりでいて きっと何もかも夢で 終わるんだろうとかまだ若いのに言って 無駄に冷めた飯をかんでいる 何か楽しい仕事がしたかったんだ それが何かわからないまま 昼が終わったらすぐ夜が待ちかまえていて 太陽を引きずり落とす 大切な毎日がどんどんチープになってゆく まくらの近くに置いてある このマンガどこまで読んだんだろう? 主人公の強さが悲しくて途中でやめたんだろう なぜ聖書なんか買ったんだろう? 生きるのがちょっとイヤになるだけだろう ほこりをかぶったヘッドホン 汚い飯 オレンジ色だったオカリナ いつの間にか年をとって 現実の見えない空想気味の老人になるのならば このまま目が覚めなければいいのに ガラクタとわけのわからない夢を抱えて眠る 悪い方ばかりに思考が行くんだ そんな時はせめて上を向いて寝るんだ 真夜中の高い高い天井に開いた ドアを見つめるんだ 絶対に届かないのに 光がこぼれてくるんだ 涙がこぼれてくるんだ そこから見ていてくれるんだ 宇宙の天井から
天井にドア ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1494.5
お気に入り数: 1
投票数 : 3
ポイント数 : 8
作成日時 2021-01-26
コメント日時 2021-02-09
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 5 | 5 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 8 | 8 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0.5 | 0.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 2.5 | 2.5 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 4 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
強い意志を感じます現状にけっして負けない強い意志が登場人物に申し上げられることがあるとすれば「人生はいいことばかりじゃないけど悪いことばかりじゃない」祖母のことばです
0まず最初の第一連、身のまわりの雑多な現実を列挙してあるだけなのに、この悲しい詩情はすばらしい。 >でも夢があっただけで何もしなくて >何か楽しい仕事がしたかったんだ >それが何かわからないまま 分かります。 >そこから見ていてくれるんだ ここに一番胸を打たれました。突然、自分以外の何者かが登場する。見ていてくれる何者かが。 全篇通して悲しいリズムが脈打っていて、読者を引きこむ力があると思いました。
0福まるさん、コメントをありがとうございます。 この詩は若い頃の作品で、人生や将来について迷いがあったときに書いていたものです。でも、その頃の自分には、何かやりたいという意志があったんでしょうね。今は、登場人物(自分)もわりと悪いことばっかりじゃないと思えるようになりました。
0福まるさん、間違えて「作品へ」のコメントになっていました。申し訳ございません。訂正します。
0yasu.naさん、コメントをありがとうございます。 自分以外の何者かが登場する。そこは書いていてあまり気にしていなかったところだけど、結果的に良い効果があった部分のようです。「胸を打たれる」という言葉が、うれしい。むしろ私が、コメントに胸を打たれました。
0沙一さん、温かいコメントをありがとうございます。 当時の私には、天井にドアが開くくらい、やりたい事があったんでしょうね。今の私は、詩を書いていますが、どういう方法であれ、光の差す方へ向かっていけたらいいとは思います。クリエイティビティも、発揮したいです。 何度かコメントをくださるので、いつも感謝しています。
0ネガティブな言葉が多い中で、不思議と全体の印象がポジティブであることに心が打たれました。 水彩色のような淡いイメージが詩全体を通して発揮されていて未来に希望を見出している様が感じとれる気がします。 楽しい読書体験でした。
0白川ロイヨさん、コメントをありがとうございます。 自分でも読み返して、決して暗い話ではなく、読者に希望を見せるような出来になっていたので、この詩を公開する機会をうかがっていました。楽しんで頂けて嬉しいです。
0「すべてが色あせてゆく」というのが作中の大きなスイッチとして役割を果たしているように感じました。 「袋開けたスナック」「昨日の夕飯」「マンガ」「聖書」「ヘッドホン」「マーガリン」「オカリナ」とあるのですが、「スナック」と「夕飯」には多少色合いがありながらも、他のものは元から単色系だなあと。そういえば、「夢」に色がついている人とついていない人がいるとかいないとか聞いたことがありますが、こういう想起をさせたのも「色あせてゆく」という表現が、他の名詞と必然的に結びついているように感じさせるからでしょう。 そして、「ドア」が出てきますが、ドアは人為的に「開ける」ものでもありますが、人の作用を離れて「開いている」ということ。つまりは、語り手のコントロール下にないことが表されています。冒頭の「袋」は「開けた」ものであり、「マンガ」とか「聖書」とかもページを「開く」ものですね。 そもそもドアの役割なのですが、一般的には、どこかとどこかとの境目を繋げるための道具だと僕は認識しています。つまりは、この作中における世界とどこがこのドアによって繋がっているのかと。 >この思いをわかってくれる人なんてどこにもいない という切実な想いは、僕は普段から考えていて、それを敷衍して、他人の想いを僕はどれだけわかることができるのだろうかとも考えます。無論、同じ経験や感覚を持っているわけではないので、真にわかることはできない、という前提のもとながらも、似たような経験や感覚を持つことによって、推測することはできるんですよね。 その後の「大切な毎日がどんどんチープになってゆく」は、最初の「色あせてゆく」の言い換えであって、身の回りにあるものがなぜ「いま・ここ」に置いてあるのかと、その意味を問うここの詩行の連なりが好きですね。「時間が経った」ことをきちんとものに目を向けて表現されていて、「ほこりをかぶっ」ているから丁寧に扱っていないのかもしれないですが、少なくとも作品内では丁寧に扱われているという印象を受けました。 そして、こうしたものらと同様に語り手自身が年をとった時のことに想いが馳せられます。「現実の見えない空想気味の老人」とまで述べ、自分がこうなってしまう可能性を感じているのでしょう。 希望と言えば、安直かもしれません。でも、「絶対に届かないのに 光がこぼれてくるんだ」と、その先に何が在るのかは、語り手も読み手も知ることはできません。なぜならそれは「絶対届かない」からです。それでも、ドアが全くなければ、この世界にただいることしかできません。たとえ見えなくても、ドアがあることによって、きっと「向こう側」があるということを思わせてくれるだけでも、ドアがある意義があるのでしょう。
0なかたつさん、とても丁寧なコメントをありがとうございます。 当時の私は、それほど深く深く考えてこの詩を書いたわけではなかったと思います。しかし、確かに「色あせてゆく」という言葉通り、色の無いものばかりですね。感覚的に、色の無い物体を詩の言葉に選んだんでしょう。 「天井にドアが開く」という発想は、どこかに救いを求めている登場人物の心情を表しているんだと思います。 >どこかとどこかとの境目を繋げるための道具 これも言われてみて気付きました。でも、ドアがあったとして、そこからどこかへ繋がっていないと考えるのは不自然だし、どこか宇宙の超自然的なものや生物(神様かもしれない)のいる場所に、繋がっているはずですよね。 「希望の詩」といってしまえば、ひとくくりにし過ぎな詩かもしれません。当時は、何で天井にドアがあると思ったんでしょう。
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