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人が死ぬ時
友人が嘘をついた、友人がついたのは小さな嘘だった。しかし、私にとってはショックであった。その人から死臭がした、その人とは疎遠になってしまった。 彼女は笑顔が綺麗な女性だった、私は彼女に恋をしていたと思う。私は親友に相談した。私から死臭がした。 彼女と彼が楽しげに歩く姿を見た。彼とは自然と疎遠になっていた。彼の姿を見る度、私から死臭がする。 人の死は簡単だ。 祖父が死んだ。老衰だった、祖父は天寿をまっとうした。私は祖父のことを尊敬していた。堅物だったが、時折家族にみせる優しさや、本人は語りたがらないが、他の家族から聞かされた祖父の偉大な経歴には心底驚かされていた。私にとって、最も尊敬できる人間が祖父であった。そんな祖父が、死んだ。葬式には沢山の人が参列した。会ったことも無いような偉い人まで。最期まで尊敬していた。動かなくなった祖父、火葬場で骨となった祖父、墓に入った祖父、ずっと花の匂いがしていた。知っているが、名前が浮かばない、そんな匂い。いい匂い。 私は死ぬ、寿命だ。エリートではないがそれなりの給与が出る会社に勤め、昔からの馴染みの女性と結婚し、子宝にも孫にも恵まれ、我ながら幸せな人生だったと思う。最期は病院のベッドの上、妻も子も孫も、会いに来てくれている。「おじいちゃん」手を握られながら声が聴こえる、遠いような近いような、目は開かない、声も出ない、私は死ぬ。ぼんやりとしている。終わりが近い。だけどその中で一つだけはっきりしている。花の匂いがする。心地よい匂いだ。安心した。私の意識は遠のいていった。 この匂いも、いつかは死臭に変わってしまうかもしれない。人の死は簡単だ。
人が死ぬ時 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 819.3
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ポイント数 : 0
作成日時 2021-01-03
コメント日時 2021-01-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文