別枠表示
The 360
チャオプラヤを流れゆく営みに、きらびやかな魂が淀んでいる。 あの淀みこそが静脈のオリジンであれ、と心臓が願っている。 規則正しい願いを縁どるように、発光するガラス塊が生えている。 ビル群こそが結晶のオリジンで、だから街にも植生がある。 泡の中で宙吊りのビル群が蛍光しながら昇っていく、ちぐはぐな励起。 クレヨンの配列みたいなカクテルたちには、たしかに名前があった。 でももう取り返しはつかない、すべてが”This one”。 カウンターに寄りかかったウェイターがトレーを小脇に抱えたまま、大らかに欠伸をした。 その口からひとつの形状が生じる、それは無定形としての脊椎。 与えられた名前が”this one”に塗り替えられていく様を、脊椎は無感情に処理してきた。 あばらの先を発端に、屋上の隅まで張り巡らされた末梢神経。 そのすべてから感情は遊離する。 あまりに些細な揺らぎを原因として。 眼下で光り続けるネオンをありのままに読解できないから、ラベリングは生じる。 チャオプラヤは静止しない、人々のためではなく、人のために。 同化しようとする静脈の衝動は、気泡の中から生じる。 ルーフトップも、植生に従っている。
The 360 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1828.3
お気に入り数: 0
投票数 : 1
ポイント数 : 6
作成日時 2020-12-17
コメント日時 2020-12-29
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 6 | 6 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 6 | 6 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
沙一さま、コメントありがとうございます。 返信が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。 >大河とビル群、つまりは換喩としての自然と文明。 感想をいただき、自分でもはじめて意識しました。拙作は2年ほど前にタイを訪れた時にしたためた詩なのですが、普段山に囲まれた環境にいることもあって、その時はバンコクの空の広さ、あるいは地球の広大さを視野から感じていました。そのような感情がバンコクのビル群との対比によってより鮮明だった結果の本作なのかもしれません。 参考になるコメントをありがとうございました。
0作者が街に馴染みすぎている感覚もありますが、店名での始まりが良かったです。難しいカタカナ語があっても伝えたい事が簡潔です。
0てんま鱗子さま、コメントありがとうございます。 >作者が街に馴染みすぎている感覚もありますが、 個人的には大変興味深い感想です。 というのも、その店を訪れたのは旅の最終盤で、独特の空気感にもだんだん熟れてきたと言いますか。 不遜ですが、渡航してきたばかりの日本人らしきグループを見ては「ちょっと微笑ましいな」とすら思っていた頃合いでした。 そういう感覚がもしかしたら作中に出ているのかもしれません。 詩においての良し悪しとはまた別の問題かもしれませんが。 大変参考になりました。 ありがとうございました。
0