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脳と宝石
やさしい言葉を集めて ネットオークションに出す日々 うんと遠くに住む 友達に、手紙を出すために お金がたくさん欲しかった がらんどうとした交差点では 含み笑いをするように ひかりが質量を得ては捨てて 信号のまわり、ほらそこ 空間が滲んでいる の、冷たい手をしているくせに 君の愛情が私に肉体を与えている 命から遠ざかっていけば 指先から透明になって いつか、脳は宝石のように 美しいものへと変われたはずなのに
脳と宝石 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1350.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-12-15
コメント日時 2020-12-19
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
久々にお名前を拝見したので、思わず読んでしまいました。 「やさしい言葉を集めて/ネットオークションに出す日々」って、さらりと書かれているんですが、実におもしろいなあと。原因と結果、どちらがどちらなのか、ということで言いますと、「ネットオークションに出す」ため、戦略的にやさしい言葉を集めているのか、それとも、「やさしい言葉」が集まったから、「ネットオークション」に出したのか。後者だったとしても、なぜ「ネットオークション」という場所にしたのか。「ネットオークション」という場所の性質を更にとらえると、これは売りに出されているということで、「やさしい言葉」に対して、金銭を受け取るということが発生することでもあって、うーん、この2行だけでも、ものすごく想像が拡がります。 よくよく見たら、やはり後で説明されていました。「友達に、手紙を出すために/お金がたくさん欲しかった」という真の目的が。やはり、友達に手紙を出すためのお金を得るための手段としての2行だったのです。ネットオークション自体もまた「うんと遠くに住む」人とやり取りが発生するかもしれないということを考えると、対照的に見えてきます。 と、ここまではよかったのですが、急に世界観が変わります。最初は率直に欲望が示されている(心情描写)のですが、映像・世界が拡がっていきます(情景描写)。 その情景に色を与えるのが「ひかり」の役割ではあるのですが、「ひかり」は私たちの思い通りになるものではないですから、人間の意志などというものをよそにして、「含み笑い」をしているようにも思えます。「信号」もまた色のついた「ひかり」を放つのですが、そのことによってやはり世界は色づき、「空間が滲」むのですが、やはり、急に場面展開。 一行と一行のスピードが一定ではなく、改行を均一的に読んでしまうとはまってしまいますね。いきなり、「冷たい手」が出ることによって、語り手/読み手のフォーカスがずらされます。「冷たい手をしているくせに」というのは、君の手なのでしょう、つまり、君の体の一部です。そして、語り手の体を体たらしめるのが「君の愛情」であります。 「命から遠ざかっていけば」という何気ない1行が何だか意味深な気もするのですが、これは、君と私との命の距離、つまり、身体的な距離を述べているような気がしています。そうすると、私は「君の愛情」からをも遠ざかることになり、私は私の体の確実性を失うことで「指先から透明になって」いるのかもしれません。「指先から透明になっ」た先に待つ未来というのは、私の体の全てが透明になるということであり、それでも、唯一この世界に残る私というのが「脳」なのでしょう。まるで、私という体が無くなって、脳だけが宙に浮かぶような映像が浮かび上がりました。それでも、「いつか、脳は宝石のように/美しいものへと変われたはずなのに」というのは、嘆きのように聞こえてくるもので、「変われたはずなのに」というのは、変われなかった時に述べられる嘆きです。つまり、私の体は私の体として維持されており、透明になることはない。この作品内において透明であるのは「ひかり」だけであり、その「ひかり」を「美しいもの」として感じさせてくれるのがまさに「宝石」なのです。それにしても、「脳」を「宝石」に置き換えるという発想はなかなか生まれないもので新鮮でした。そして、大きくは3つのパートに分けることができると思うのですが、少ない行で多くの映像を思わせることは、僕にはできないなと。何より、最初の2行がやはりくせになりますね。
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