白い壁に囲まれた
誰もいない部屋の
窓の外で
木々の枝葉が
風に揺さぶられている
厚いガラスに隔てられ
無音のまま
激しく揺れる枝葉は
無言で語りかけてくるよう
無音に支配された
白い部屋の中では
ただ秒針の虚無を刻む音だけが
床や
壁や
天井を
蟲のように這い廻っていて
蠢く秒針の蟲に囲まれながら
無音に揺れる枝葉を
ぼうっと眺めていると
どこかで見たことあるように
思えてくる
枝葉が語りかけてくる
無言の言葉を
遠い記憶をたどって
己の言葉に変えようとしても
形を成しかけた言葉は
焦点の定まりかけた記憶は
秒針の音に切り刻まれて
蟲のように
散り散りとなってしまう
無音の中に這い廻る蟲は
誰もいないこの部屋の
床や
壁や
天井や
窓を歪ませる
厚いガラスに隔てられた
風に揺さぶられる枝葉という
他者の
無言の言葉
虚無を刻み続ける
秒針の音という人工の蟲に
切り刻まれる
己の言葉
遠い記憶の象
部屋の歪みを正す術を
持っていない私は
今なお窓外で
無音のまま
風に揺さぶられている枝葉を
ただぼうっと
眺めているだけだった
作品データ
コメント数 : 5
P V 数 : 1139.6
お気に入り数: 1
投票数 : 3
ポイント数 : 0
作成日時 2020-12-07
コメント日時 2020-12-13
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
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2024/11/21 23時35分42秒現在
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蟲が近似的未来と錯綜的過去世の即時的遠景に感じられ「部屋の歪み」という空間的というより時系列的な倒錯感をいっそう心象的把握描写に際立たせている
0アミアミさん コメントをありがとうございます。 部屋の歪みはという点につきましては、他者の無音の言葉と秒針の音との不協和音のようなものを表現しようとした試みです。
0無音が聞こえました。
0未さん コメントをありがとうございます。 私の感じた無音を聞いていただき、ありがたく思います。
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