あなたはあのとき
アルミニウムの涙を
流していましたね
細かく粟立つ
電解液のただ中に
析出する哀しみは
透徹した壁をすり抜けて
無反応な外の気相へと
鈍い銀色の光彩を
散らしながら
レッセフェール
凝結された識覚
幽かな陽電子の煌めき
赤茶けた
ボーキサイトの岩塊を
無慈悲に砕き
浸食してまでも
酸化される呪縛から
逃れようとして
私はあなたの放つ
鈍い銀色の光彩に
深く秘められた
淡い可塑性の渦に
巻き込まれるように
電気精錬の抵抗値に
守られているのです
レッセフェール
透明さへの志向
幽かな陽電子の煌めき
あなたの識相より
溢れだした
アルミニウムの涙は
一切の干渉を拒み
ただ鈍い銀色の光彩を
外の無反応な気相へと
散らしていました
それは
細かく粟立つ
電解液に析出する
還元された哀しみの
せめてもの
慰めなのかもしれません
今
透徹した壁をすり抜けて
液相から気相へと
目に見えないほど
微細な粒子が数多流れ出て
酸化される呪縛から
解き放たれて
可塑性の渦を
象ってゆきます
その手を見て
その指の
爪の先に幽かに灯る
陽電子の煌めきを
その銀灰色の網膜に
焼き付けてください
あなたの
アルミニウムの涙は
そのために
流されたのですから
作品データ
コメント数 : 9
P V 数 : 1516.2
お気に入り数: 0
投票数 : 3
ポイント数 : 4
作成日時 2020-12-04
コメント日時 2021-01-02
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 4 | 4 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0.5 | 0.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.5 | 0.5 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
閲覧指数:1516.2
2024/11/21 22時55分23秒現在
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レッセフェール、とは一体何かと調べてみれば「為すに任せよ」という意味で、自由放任主義と訳されるみたいですね。 ここでは、あるがままであれ、とかそういうニュアンスと自分は解釈しました。 無機質なアルミニウムの精製が感情豊かなある種の面白味と共に描かれています。 レッセフェールがいいアクセントにして。 秀作ではないでしょうか。
0羽田恭さん コメントをありがとうございます。 このような詩に「レッセフェール」という言葉を入れるのは、少々唐突すぎる感じになるかとためらったのですが、いいアクセントと観ていただいて、安心しました。
0すごい。 すごいのは、この詩全体からアルミニウムの手触りを感じるんですよね。 それは詩でアルミニウムを説明しているから、というよりは 漢字とかひらがなとかの形からかな。 軽くて、薄い膜のある銀色の、冷たい手触り。 >幽かな陽電子の煌めき 私は文系で、アルミニウムの科学的な特徴などまったく知らないんですが、 それでもアルミニウムの煌めきをさっと思い浮かべることができたのです。 それがあなたの識相からあふれ出しているのだから、 もうこれだけで映像的な美しさと言語的な美しさを感じました。
0アルミニュウムの沸点がどれくらいか 思い出そうとしてしまいました。
0楽子さん コメントをありがとうございます。 この詩については、はじめに「アルミニウムの涙」という言葉が頭に浮かんで、それをもとに書いたものす。 テーマが多少突飛過ぎるかとも思いましたが、この詩に美しさを感じていただいて、安心しました。
1田中宏輔さん コメントをありがとうございます。 この詩を書くにあたって、アルミニウムの精錬をイメージしましたが、沸点にまでそれが及びませんでした。 その点をも含めて書けば、より面白い内容になったかもしれません。
0言葉のひとつひとつがとても綺麗でした。 うまく言葉にできないのですが、なんというか、本当に綺麗でした。
0螢草さん コメントをありがとうございます。 詩は書けば書くほど、言葉を紡ぐことの難しさを感じさせるもののように思います。
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