名前のない夜 - B-REVIEW
新規登録
ログイン
PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



作品を
別枠表示

名前のない夜    

冷たい闇の中で光る自動販売機に手を伸ばす。 ボタンを押して吐き出されんとする商品が、落ちた時に響く音がやたらと寂しい。こんな気持ちは誰も知らないでいい、と思う。冷たい10円玉が手のひらから、溢れ落ちないようキツく握りしめて駅へ歩く。 いつもより随分と人が少ないくせに、同じ時間おきにくる電車の虚しさ。踏みつけた点字ブロックの歪な凹凸を革靴の底に感じながら、人工的な灯りに飛び込まざるをえない。自分の不甲斐なさが腹立たしい。願うなら瞼の裏で幸福な夢を見ていたいのに。 闇の中に家の灯りを捉えながら走る鈍行電車。腰をおろしてから気がつく、ガラガラなのに向かい合わせで座る気まずさ。窓ガラスに反射した自分の顔なんて見たくないから、目を伏せて時計の針が走るのを目で追う。夜行バスはまだ来ない時間だ。最低だ。 憂鬱を履いて足音を響かせながら、夜を彷徨いバス停へと辿り着く。ぬるいコーヒーを赤くなった手で包みつう、私を運んでくれるバスを待たなくてはならない。 待機列の人々は携帯に夢中。世界は平行、戦場にあるようだ。乗車券を受け取る運転手はロボットじみた無機質さでもって、世界を分断している。 一人一人が違う世界を抱えながら走る夜行バスの孤独。カーテンで閉め切られた閉じた世界。星も見えない。 こういった時に抱く感情の名前を、誰か教えてくれないかい。名前を持たないこの夜は、ひどく寒く長すぎる。


名前のない夜 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 1
P V 数 : 1004.2
お気に入り数: 0
投票数   : 0
ポイント数 : 0

作成日時 2020-11-25
コメント日時 2020-11-25
#現代詩
項目全期間(2025/04/09現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合ポイント00
 平均値  中央値 
叙情性00
前衛性00
可読性00
 エンタメ00
技巧00
音韻00
構成00
総合00
閲覧指数:1004.2
2025/04/09 20時56分28秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

名前のない夜 コメントセクション

コメント数(1)
藤 一紀
作品へ
(2020-11-25)

こんにちは。淡々と、細かいところまで描く語り口のなかに、語り手の感じている寒いまでの心細さを感じました。

1

B-REVIEWに参加しよう!

新規登録
ログイン

作品をSNSで紹介しよう→

投稿作品数: 1