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楽園への出奔
林檎を二人で食べたような表現がある。 だがこの二人にどこかの書物にあるような原罪なんてない。 >鼓動が肉体のドアをノックする あるのは広い世界への疾走だ! イチジクの葉を体に纏う事もなくむしろ服を焼いてしまい、世界が、この詩が、広がっていく。 >夜の衣が剥がされてゆく >しののめ あけぼの 明るい空へ 明るい明け方、 >旅立ちの時だ >季節の風を身にまとう芳しいあなたと >野茨の靴で戸外へと歩き出す 二人が旅立っていく。 神話のように >巣箱をすり抜ける冷まじき風と >朽ちた落葉で作られたわたしたち >反り返り宙をトンボ返り >あなたの白い胸に散る雀斑の数さえ >宇宙の星と繋がる この二人の世界を共に味わえる。 >夜を歩いてゆく >今日の公演はお終いと劇場のカーテンを引き 夜が来て >幾億粒の砂より掘り出そう >埋もれてしまった なにもかもを >樹々を その果実を >季節を 想い出を >わたしたちの恐怖を >明滅した夜と昼を それでも世界は広がっていく 自然のリズムと調和を感じさせ、四季に浸っていく。 >いまだ物語が始まる >ずっと手前にいる 後段、読み手が抱えきれないほど味わってもこの二人にとってはまだ始まり。 >空の下で眠り 空の下で起きる >二人は夢をみる 大抵は悪夢を >でも、ときおり >美しいものがちらりと見えたりするのだ きっと怖い目にも合っているのだろう。 でもそれ以上に世界が美しく素晴らしいと伝えてくれる。 神話にしては短いこの詩は、世界の美しさを読み手の代わりに表現してくれているようでもある。 出奔した二人に幸あれと、祈らずにはいられない。 考えてみれば出奔なんてできる人間も少ない。 やったところで悲劇が待っていたりもする。 ここまで天地を味わえることさえもあまりなくなってしまった。 でもこの詩からは感じる事が難しい良いものを、味わう事ができました。 そういった点から、多くの人に読んでほしく思います。
楽園への出奔 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1442.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
作成日時 2020-11-22
コメント日時 2020-11-25
良い詩ですね。紹介して下さりありがとうございます。
0まさか作者からそう返事か来るとは予想外でした。 とはいえ自分が表現した物の正体がはっきりしない場合はありますよね。 こちらこそ良い作品をありがとうございます。
0紹介文を書いた甲斐が早くもあったようです。 お互い、読むとしましょう!
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