冬の劇場 - B-REVIEW
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PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



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冬の劇場    

夜明けが追いかけてくる、 終幕ののちに── 冬の叫びが劇場を駆け巡り、 顔のない俳優がコートを羽織る。 しおれた花束が客席を賑やかし、 スポットライトの熱は、とうに冷めきった。 「真実も、嘘も、大げさな戯曲も、 長ったらしい独白も、もうたくさん。」 老女優は煙草を吸いながら、そう嘯く。 煙は暁に染まり、 赤い絨毯の上に、灰が白く光っている。 緞帳は確かに愛を孕んでいた。 しかし、書割の世界は全て凍ってしまった。 月が沈み、星々の葬列を見送ったあと、 冷たい太陽の下で、我ら観客は漂う、 孤独の遠い海を。 ──台詞を奪われ、魂を忘れ、形もない「主役」に、 神々を見いだすものなど、もはや誰もいないのだ。



冬の劇場 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 1321.2
お気に入り数: 0
投票数   : 1
ポイント数 : 0

作成日時 2020-11-03
コメント日時 2020-11-05
#現代詩 #縦書き
項目全期間(2025/04/09現在)投稿後10日間
叙情性00
前衛性00
可読性00
エンタメ00
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閲覧指数:1321.2
2025/04/09 23時23分19秒現在
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    作品に書かれた推薦文

冬の劇場 コメントセクション

コメント数(2)
大塚拓海
大塚拓海
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(2020-11-04)

説明するのは野暮だと思いますが、「この世は舞台で、人はその上で自分の役割を演じているに過ぎない」と言った誰かがいますね。しかし、そんな単純な世界観は崩れ去ってしまった。この詩が見事に、突き崩している。 舞台という秩序を失い、神をみうしなっても、劇は続いている。 日常と舞台の上のリアリティの濃度の差が曖昧になってくる。どこまでが、現実でどこまでが虚構か。 ルールを失った私たちはどのように「主役」として振る舞えばいいのか。誰も答えられない。それでいいのか。 アイデンティティやら、主体性やらと叫ばれることの空虚さに対する疑問。そんな概念上の自分で満足しようとすることに対する欺瞞を暴く。鋭い。鮮やかな劇場のつつましい闇。

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安里和幸(Groww)
安里和幸(Groww)
大塚拓海さんへ
(2020-11-05)

大塚拓海さま コメントありがとうございます。 深い洞察と批評、恐れ入ります。本当にコメントのとおりで、現代の虚無感みたいなものを舞台と演劇に仮託して、詩を作ってみました。

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投稿作品数: 2