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神話の果て
不死と成り果てた身をかすかに動かすと 啼き交わしているアトリの声で森は色めきたっていた (何が起きているのだろう 話が違うようだ) 遮られるままに繁らせていた、葛のツルをバサリと手刀で断ち切る 立ち上がる 関節が軋む音がキリキリと新しかった 西の方角を頻りに示唆して 点在しているコスモスの花 わざわざしつらえられたような、 黄色い小蝶が遊んでいる 寓意が立ち込める、白茶色の空を斜めに浴びながら 蒼然とした太陽が放射している鈍い光に目を凝らした 私の役目は正しく綴じられ ただ、戦士として槍を振るっていた頃の記憶 花に目もくれず、立ち呆けた姿勢で (まばたきもせず) 遠い一点から呼ばれる声を待っていた 背後には、釘で打ち付けられたように動かない白い白い月 (ここで良い。) これ以上乾くことも錆びることも、叶わない体 こちらへ突き進んでくる黒馬の化身につき倒されるまま、仰向け様に倒れた 骨になって得た証明 在りし日々の感覚が真上に陣取り、廻りつづけるのを 眼窩は微動もせずに捉えていた その後、 美しい巨鳥のような銀色の機体が私を回収しにきた それが 立ち去る光景は二番目の太陽のように悠然とした眺めであり 垂(しだ)れた甘い木の葉を口に含んでいたエゾジカも思わずそちらを振り返ったという 滑らかな木のような女が音もなく滑りでて その無垢な首筋を横からやさしく抱いた
神話の果て ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 890.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-08-22
コメント日時 2017-09-03
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
読んだ感想を少し散文的にコメントします。 物語の果てといえるのか 神話の果てとは 眼でみて手で触り耳で聴こえること 認識可能な科学を追究し進化させる歴史よりも 形而上なるものを追究し生活の一部として スピリチュアルなるものが在った時代は長い 生活の一部としてスマホがあるように 生活の一部として「美しい巨鳥のような銀色の機体」が 在る時代と場所があったとしてもおかしくない 人類の歴史は長いのだ 神の時代に生きていた人はいない 2017年まで辿り着いた認識可能な事象は全て物語だ 物語の果て 神話の果て
0三浦果実さんへ コメントを有り難うございます。 以下引用。 けいじじょう 【形而上】 1. 形をもっていないもの。 2. 哲学 感性的経験では知り得ないもの。有形の現象の世界の奥にある、究極的なもの。 ええ、はい。スピリチュアルなものは、革命の信念として利用されたり、もしくは思想と等しく、歴史の責任を背負わされて処分される傾向があります。 燃やされて消えていった文献や、犠牲にされた思想は数知れない、でしょう? たとえば、その人が信じているものよりも、私はその人の行動を見ます。もし、信念を貫いて死んでしまうとした場合、私は死の間際に『あれ?ほんとにこれでいいか?』と思うことでしょう。 死とは、たった一瞬で、その人の全てを『見直させる』働きをするものだろうと、感じています。 ナチスの犠牲になったユダヤ系の人々も、自殺を図った指揮者であったヒトラーも、 説法を解いてまわる僧も、 暗殺される大統領も、 滝に投身する人も、 戦争の終結をはかるために、水素爆弾を開発した博士も、 死のまえにはやはり思うのではないでしょうか。 『あれ?本当にこれでよかったか?』 科学よりも信念よりも、私は人間の行動を重視します。 再び、引用。 △有形の現象の世界の奥にある、究極的なもの。 いつの時代も変わることのない、人が人を思いやる気持ち、 人が人をこう気持ち。 究極というのは、私はそれではないかと思いました。
0追記しますm(__)m 引用△ 有形の現象の世界の奥にある、究極的なもの。 それは、どこにあるのでしょうか。 一冊の本の中ですか。 一握りの歴史の中ですか。 オーラの中に見えますか。 それは目にうつる『外側』に在るのではない。 成功者になるのではなく、失敗に終わるのでもなく、 『それ』を内に携えていられる人が、平和そのもの、なのです。 …とだけ、申し上げまして、終わりたいと思います。
0〈西の方角を頻りに示唆して〉死の安楽の地を示唆する景色を目にしながら、語り手(主人公)は〈不死と成り果てた身〉を引きずって奮い立たせて、生き続けなくてはならない。なんと残酷な運命なのだろう、と思いました。〈遠い一点から呼ばれる声を〉待ちながら、何度も何度も、生き返って闘わなくてはいけない・・・。 最後に〈滑らかな木のような女が音もなく滑りでて/その無垢な首筋を横からやさしく抱いた〉という一節が置かれることによって、この不死身の戦士の苦悩は、少しは報われるのではないか、と思いました。
0まりもさんへ この戦士は死ぬことができないために、 人間のように人生を振り替えり反省する、ということが、できません。 何度も人間の手を借りて再生しますが、 戦士が『声』を待つようになったのは単に初期のプログラムに忠実だから、ではなくて、『声を待つ』という新しい経験を戦士が覚えてしまったのだろうと私は思います。 その経験もまた工場でリセットされてしまうのですが、 最後に自然界の沈黙の瞳に見送られながら、戦士の、苦痛がいくらかは和らいだことでしょう。
0神話を生きる、主人公の目線で描かれた作品だと言うことを前提にして読みました。それはつまり、神話という定められた運命を辿るしかない主人公であり、神話そのものは語り継がれるものでありながらも、読者は物語の終わりに辿り着けばそれ以降のことは考えません。神話そのものが語り継がれる以上は、その世界に生き続けなければならない主人公。「何が起きているのだろう/話が違うようだ」とは、運命づけられた主人公の嘆きでありながらも、運命から少し外れようとする姿勢が感じられます。それすらもまた運命なのかもしれません。 「西の方角を頻りに示唆して/点在しているコスモスの花」とは、ヒマワリだったら何となく想像ができました。西は、陽が沈む方向であり、少しでも陽にあたろうと顔を向ける植物たちの姿を感じました。 「わざわざしつられられたような、/黄色い小蝶が遊んでいる」からの「寓意が立ち込める」という展開は、神話を神話たらしめる要素、わざとらしい場面配置が存在するということを感じました。そのために、やはり神話という運命づけられた主人公の「私の役目は正しく綴じられ」という行に繋がります。 物語というのは、語られた内容が全てであり、言わば語られなかったことは描く必要のなかったものとして切り捨てられています。「私の役目」とは、戦士として戦うだけでよかったのでしょう。それゆえのまた「ここで良い。」という自分自身への語りかけは味があります。 「美しい巨鳥のような銀色の機体が私を回収した」のは、果たして運命づけられた神話なのでしょうか。おそらく、神話としては描かれなかった世界として、戦士の希望なのでしょう。つまり、神話を生きるものと神話を語るものという絶対的な区別は越えられるものではない中で、せめてもの戦士の抵抗です。終盤の神話を語るのは、神話を語り継いだものではなく、神話を生きる戦士が語っているのでしょう。 ただ戦うことだけが役目であった戦士は、語り継がれることでただただ戦うことしかできませんが、その世界でいつか死にゆくことを願っているという、神話が無常かつ無情な物語であるということを考えさせられました。
0なかたつさんへ こんにちは、コメントまことにありがたく頂戴しました。 なるほど、と思いました。このように、投げ掛ける先が曖昧な作品は、いわばようやく打ち返したピンポン玉(卓球のボール)のようなものです、なので、受けとる側のラケットの角度を感じられるコメントは、とても信頼でき、有り難いことなのです。 それは言い換えれば、「どこから打ち返してきてもいいです」と卓球のコーチが差し出してくれるファーストボールのような感覚で、ただしく私を仕切り直してくれたからです。 内容については、 (長らく不安定なネット・コミュニケーションに居続けたために、すっかり芯をなくした人間が、「神話の中の確固とした無敵のモチーフになりたかった」そんな心境が出かかっては、引っ込められ、また出かかっては、引っ込められ……そんな、至極、女々しい状態でプレゼンしてしまった、情けない作品だっっ、と私は告白します。 戦い続ける……のは、多分、作者の意志とは逆の方向のものなのですが、 何かを守りたいから必死に「チカラ」を誇示するしかない、という感じでもあります。 焼き物に糸を通したような、かわいらしいゴーレムだったらまだ「助けたい」ような感じもしたでしょうが、私は敢えて「手刀」をあっさり繰り出して草を切るような粗忽な戦士を出しました。 それはまた、自分を戒めるための客観視点をまた作中に置きたかったのやも、しれません。 長々と不粋な解説をいたしました。お許しください。 ただ、たったひとつだけ、偶然にも私が予測しなかった女神がラストに登場しました。 エゾシカの首を横から優しく抱く彼女の正体だけは、わたしにもまだ未明です。
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