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回り揺れる止まらない詩情
詩情にあふれている。これは確かだ。 ただ、どこまで読み切れているのか大変に怪しい。でも、素晴らしい。 だから推薦文を書いてみよう。推薦文にならなかったとしても。 最初、コメントに書いたように二連目の記述から「天文と人の生き死にを重ねた」と思った。 読むほどに、そういうわけでもない気がする。 >倒立した壁は全て崩れている >(泡の内側は外へと向かう) >淀んでいた周囲は過去ではない >(口の中には走り回る森の群れ) >方角の向こう側から光が飛んでくる >(四季の乳房、道の消失) 最初から判然としない内容でありながら強烈な詩情をぶちこまれていく! これはなんだ。 崩れたのは、外に向かう泡は、自分自身の殻か。 淀んでいた周囲を振り切り、口の中で鬱蒼とした何かが暴れ、一つの方向性に向かっている。豊饒性と共に。 >淡くなろうとした血痕の脳裏では >見境のなくなった幾人もの星屑が、流星になろうとした >顔から出ていこうとする霊魂たちは一つの管であり、 >役目を終えられず、手を胸にあてる 流れ去る流星の様な亡くなった魂が、流れ去っていくのを哀悼しながら。 >回る僕、回る私、星、四つの指と、一つの手 二人が一つずつの手の、四つの指を絡ませ回る。 拡散するエネルギー、それはまるで星のよう。 >鹿の雄は、移ろいに宿り >鹿の雌は、暗がりに宿る >同じ脈を通わせて、思慕の中にいる どういうことだろう? でもまるで織姫と彦星のようだ。 暗い夜空に離れ離れになりながら同じ思いでいるような。 >空の端を掴み、息を吐くと >そこから私たちは居なくなる > >荒れた原野が、背中に迫る >恐ろしい人、首に、赤 > >潰した紙屑が、広がっている どう考えよう。どう思うべきか。 意味はやっぱりはっきりとしない。 でも揺れる。感情が。 読むたびに。 >回転の、振動は、止まった。 詩情を、感情を動かし揺らした詩はこれで終わる。 でも余韻はしばらく続く。最後の言葉と反して。 こうまで詩情という点に特化した詩は少ないのではないだろうか? 読むたびに心地よく感じました。 広く推薦するに値する作品であると思います。
回り揺れる止まらない詩情 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1435.9
お気に入り数: 0
投票数 : 1
作成日時 2020-10-18
コメント日時 2020-10-19
詩情にあふれている、まさにその通りだと感じました。
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