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めざめ
残りのギガ数をチェックして、もう一度、眠る。 今日は車に乗るつもりだったけど、 それにしてもまだ朝だったから。 蝉が死んだんだって。 じゃあ今鳴いてるのって、いったい何の虫なんだろうね。 田舎で生まれて 田舎で育った私にも 田舎らしい情緒はなく 専門化された郷愁が辞典のうえに、れん、と並んでいる。 秋に鳴く蝉もいる。 夏蝉が死ぬのを見届けて鳴く秋蝉。 かな、かな、と 誰かに尋ねるような音色は、やはり、 死の侘しさを、恐れてか。 蝉が飛んでいるところを そういえば見たことがない。 少なくとも、ここ数年は。 溺れるくらいの やさしさが どこかにあればよかったのにね 何かに流されながら 少しずつ激突していく夏に 語りかけて。 闇討ちのように産まれて 下手糞の駐車のように生き どのように死ぬのかわからないまま じ、と街路樹を見つめれば 見えない場所から まだ蝉の声がする。 そうか、君たちは、 幼年期の終わりを、迎えたのか。 30分だけ無料の駐車場の、 時間はまだあるから 残りのギガを使い切るつもりでいた。 しばらくの後 可愛い女の子たちはいっせいに動きを停止して ぼやけて、 ちょうどよく愛せるようになった。 この続きは永遠に見ないと思う。 あと2分だけ待ったら、出ていくつもりだ。 かすかに胎動するエネルギーの中で 27分と、28分の間に 置き忘れたものはないかシミュレートして キーを回す、 案外狡猾な生き物。 次の駐車場への行き方は知っていた。
めざめ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1112.5
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 1
作成日時 2020-09-27
コメント日時 2020-09-27
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 1 | 1 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 1 | 1 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
出展:アーサー・C・クラーク(1953年)『幼年期の終わり』 一応書いておきます。
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