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非ネイティブ
一人の非ネイティブ、緩やかな坂道を上り始めている 一人の非ネイティブ、楽しそうではない 一人の非ネイティブ、顔面には苦悩が滲んでいる 足どりは重くて速い 非ネイティブ、その頭の中に 怒りと憎しみと嫌悪の声が消えがたく響き続けている もう引き返さない 自分を牽引するものは何であるべきかをあらためて知った 前方遠くに自分の故国が見えている 早く帰り着きたいものだ あそこには滾々たる真の自由がある 確かに人類には進歩し完成を目指すということがある いろんなことを練習して身につけた いろんなことを記憶した それらはまとわりついた微風のようにぬぐいがたく気持ちよかった そしてそれらは他国にあって多少なりとも有用で誇るべきものになると思っていた ネイティブたちは幸せそうだった 彼らは或る自由を享受していた 非ネイティブも初め同じ自由の恩恵に浴した しかしその自由な世界はネイティブたちの中のただ一人の者の恣意的銀河であった このことに非ネイティブは気づいた このときから非ネイティブはそこにあった自由に違和感を覚えて疑い その自由から逸れ始めた 逸れることができてしまう自由とは何であろうか 呼吸が苦しくなってきた 口でハアハア息をするようになり 言葉を発音することが困難になってきた 「自由」は共通語ではなかったのか 非ネイティブはネイティブになれなかった ネイティブの愛人になることも当然できなかった そんなことは非ネイティブの故国にあっては最も卑しいことの一つであった そんなことは「郷に入っては郷に従う」ということではないと信じていた とうとう非ネイティブは貶められ追放されそうになった 「人の国に来て、何だ?」 友だと思っていたネイティブが非ネイティブを監視するようになった だから自ら出立して故国へ帰ることにしたのだ 非ネイティブは記念写真を何枚も持っている 大勢のネイティブたちが非ネイティブを囲んでみんな笑っている 幸せそうだがもうあの頃に戻ることは決してない あの時代は虹のように消えてしまった
非ネイティブ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1035.7
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ポイント数 : 0
作成日時 2020-09-19
コメント日時 2020-09-19
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文