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私
未だかつてこれほどまでに私の心をえぐったものはいなかった。 そのひとは私の心層がわかりすぎていたのか。 或いは私たちはまるで波紋が水面に吸い付くように 初めから心がぴったりと似通っていいたのか。 兎にも角にもこれほどまでの相手はいないと思えるほど 人間的にそっくりだったのである。 あくる朝、二人してお互いの体をぺたぺた触りながら ぼんやりした頭でこう考えたのを覚えている。 「私はいつか死ぬ。」 そして今まで特に感じることの必要性がなかった 「決断力」という重要な人間的要素に 欠けている己を波が山を押し流すような勢いで 唐突に自戒したのである。 それはあの人にも同じことで でも二人して行くあても帰るあても見つからない。 それこそ流木みたいで流れるままの旅をしようとやはりぼんやりと あの人を抱きしめながらつぶやく私。 彼は、あの人は、いいねとだけ返して寝返りを打った。 その時私はどうしようもなく悲しくて めそめそしたふりをして心に煮えくり返る焦燥感と 虚無感に一人で立ち向かうことを決心したのである。 月日は流れ、あの人はもう帰らなくなった。 私も帰る場所はいつも同じになって 冷たい朝のしずくを目にためながら どうしても自分を捨てた自分が悔やまれて ひとり、のどかな朝日が昇るのを振り返っては また、めそめそと明後日の方向に歩き出した。
私 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 857.4
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-08-27
コメント日時 2020-08-27
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
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可読性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文