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フィラデルフィアの夜に XⅥ
フィラデルフィアの夜に手が、光に照らされました。 その手には布が執拗な程巻かれており、それを解き現れた手を見て。 「あなただったの」 そう、つぶやきがひとつ、口からこぼれました。 それは暗い森。 夜の廃屋。朽ちた館。 少女が湿った空気の中を這います。 迷い、降りしきる雨を避けるため、やむなく屋敷へ入り込む。 落ち続ける雷は、唯一の照明で、古びた屋敷を難破船の如くに翻弄する。 朝まで、朝まで、朝まで。そう思いながら。 隅にうずくまり、恐怖に、風に闇に、雨に、振動に、音に、光に耐え続ける。 光、窓から空が壊れるような音と共に館を揺らし、刃物として刺してくる。 いる。人影が。 さっきの雷光の時にはいなかった、人影。 目の前に立っている。 雷はさらにその影を映す。 人形だ。 全身サボテンみたいな棘をまぶした、牧場で使う有刺鉄線で作り上げられた、人形だ。 雷鳴、雷光、振動。 雷に風が強くなり、次の光が落ちた時には人形はいなくなっている。 気のせい。夢。 そう思った瞬間、背後に気配を感じた。 暖かさとともに。 光。 朝日が、館の朽ちた窓にも差し込んでいました。 昨日の嵐の気配を全く打ち消した、太陽が覗いてきました。 人の気配がします。 少女は背中を押され、その人の元へ走り出しました。 あれは、なんだった? 少女は再び、森の中へ入っていきます。 数年が過ぎ、あの森の中に屋敷はあるはずはないと言われて確かめに。 十分な装備に仲間を連れ、昼でも暗さが残る森へ。 くまなく探し、陽が落ちる頃。 館が見つかりました。 更に朽ち果て、崩壊した館が。 そして、少女は思い当たる方へ進みます。 仲間と共に光を照らして。 奥へ。 少女が思っていた以上に、奥へ続いています。 半ば地下のその場所へ。 そうだ、ここに来たんだ。 思い出した場所。 ちょうどその場所に、何かがある。 人の形をした、何かが。 ミイラのように厚く布切れを巻き付け、きっと暖かっただろう、風化した毛布を一番外側に纏っていました。 少女はそれを取りました。 布を取ると。 針金。 編み上げられた、有刺鉄線。 「あなただったの」 そう言うと、また布をまた巻きなおします。 館から去る前、もう一度あの人形を照らすと。 もう、いませんでした。
フィラデルフィアの夜に XⅥ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1001.8
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-08-22
コメント日時 2020-08-22
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文