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エラの詩
星の残骸が煮えたぎっていた日 エラは幼児のように泣いていた そこには今まで夜しかなかったので その熱と閃光を朝と名付けるには あまりに早熟だった 紫の光が眩しい夜へたどり着いて エラはひとり呆然とせぐりあげる 五億年の叫びで喉が焼けただれてしまった 泥のような眠気がやがてからだを重くする 丸くふちどられたオゾン層のふもとで エラはぬるんだ涙の残りかすをたゆたう 上も下もなく 右も左もなく ただ 盲の深く奥で柔らかに混ざり続ける そのうちに平たい朝がやってきて エラは大きなあくびをひとつ どこまでも地平線は伸び 水平線は広がっている 静謐の中、ミトコンドリアは眠たげに身じろぎした 無数にほころびて連なる細切れのねじまき 遺伝子に数滴落とされた原液は 数千万先でいろづくのだろう その粛々とした輝きがおそろしくうつくしい 泣いていたのはもう嘘のようだ うねる音とさざめきの中で 大声で笑うのはエラ 土気色の肉の上には色ちがいの有機物の群れ 潰れた水面から 絶えず行進は続くだろう (きっとやっとおわったのだ エラはようやく 大きく息をついた きっとずっとはじまっていたのだ エラはそうして 微かに目を開けた) エラの傍らには拍動と脊髄のせせらぎが満ちながら 細胞分裂のスピードより遥かにゆっくりと ゼリーの手足が溶けてなくなり カルシウムの脳みそも粉々にくだけた 生まれることは死ぬことと似ている 固い胸を這うセ氏二百度を 愛と呼んでもいいのだろうか (今やエラの黒々とまどかな瞳には 燃え盛る青と緑だけが輝いている)
エラの詩 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1079.9
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 22
作成日時 2020-08-17
コメント日時 2020-08-22
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 0 |
前衛性 | 15 | 13 |
可読性 | 2 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 2 | 0 |
総合ポイント | 22 | 13 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 7.5 | 7.5 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0.5 | 0.5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 11 | 11 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
即興で返詩として川柳を。 エラ笑う 命の音が 煮えたぎり
1面白いと思うんですが、うまく言葉にならないなぁ。エラ、はなんなんだろう。躍動感を感じます。
1