エラの詩 - B-REVIEW
新規登録
ログイン
PICK UP - REVIEW

ことば

ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

花骸

大人用おむつの中で

すごい

これ好きです 世界はどう終わっていくのだろうという現代の不安感を感じます。



作品を
別枠表示

エラの詩    

 星の残骸が煮えたぎっていた日  エラは幼児のように泣いていた  そこには今まで夜しかなかったので  その熱と閃光を朝と名付けるには あまりに早熟だった  紫の光が眩しい夜へたどり着いて  エラはひとり呆然とせぐりあげる  五億年の叫びで喉が焼けただれてしまった  泥のような眠気がやがてからだを重くする  丸くふちどられたオゾン層のふもとで  エラはぬるんだ涙の残りかすをたゆたう  上も下もなく 右も左もなく  ただ 盲の深く奥で柔らかに混ざり続ける  そのうちに平たい朝がやってきて  エラは大きなあくびをひとつ  どこまでも地平線は伸び 水平線は広がっている  静謐の中、ミトコンドリアは眠たげに身じろぎした  無数にほころびて連なる細切れのねじまき  遺伝子に数滴落とされた原液は 数千万先でいろづくのだろう  その粛々とした輝きがおそろしくうつくしい  泣いていたのはもう嘘のようだ  うねる音とさざめきの中で  大声で笑うのはエラ  土気色の肉の上には色ちがいの有機物の群れ  潰れた水面から 絶えず行進は続くだろう  (きっとやっとおわったのだ   エラはようやく 大きく息をついた   きっとずっとはじまっていたのだ   エラはそうして 微かに目を開けた)  エラの傍らには拍動と脊髄のせせらぎが満ちながら  細胞分裂のスピードより遥かにゆっくりと  ゼリーの手足が溶けてなくなり  カルシウムの脳みそも粉々にくだけた  生まれることは死ぬことと似ている  固い胸を這うセ氏二百度を  愛と呼んでもいいのだろうか  (今やエラの黒々とまどかな瞳には   燃え盛る青と緑だけが輝いている)


エラの詩 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 2
P V 数 : 1132.2
お気に入り数: 2
投票数   : 0
ポイント数 : 22

作成日時 2020-08-17
コメント日時 2020-08-22
#現代詩
項目全期間(2025/04/09現在)投稿後10日間
叙情性20
前衛性1513
可読性20
エンタメ00
技巧10
音韻00
構成20
総合ポイント2213
 平均値  中央値 
叙情性11
前衛性7.57.5
可読性11
 エンタメ00
技巧0.50.5
音韻00
構成11
総合1111
閲覧指数:1132.2
2025/04/09 22時50分48秒現在
※ポイントを入れるにはログインが必要です
※自作品にはポイントを入れられません。

    作品に書かれた推薦文

エラの詩 コメントセクション

コメント数(2)
羽田恭
作品へ
(2020-08-17)

即興で返詩として川柳を。 エラ笑う 命の音が 煮えたぎり

1
ほば
作品へ
(2020-08-22)

面白いと思うんですが、うまく言葉にならないなぁ。エラ、はなんなんだろう。躍動感を感じます。

1

B-REVIEWに参加しよう!

新規登録
ログイン

作品をSNSで紹介しよう→

投稿作品数: 1