まどべにいたら
風が吹いたので
レースの
カーテンがふわりと持ち上がり
次いで
ほどいていた
私の髪が揺れて
机上の紙ははらはらと舞った
窓を閉めようとすると
遠くの路上に
猫が一匹いた
猫は
道を横切るところだった
私はふと思い出した
あの猫をこれまで何度となく見てきたと
あの猫は
私がある条件下のもと
どんな窓からも外の景色を見ることによって
誰かが ほら行け と逃がして
姿を見せるようにしているのだと
私は思い当たった
また条件を満たしたんだと
それはもっと簡単に考えれば
もっと機械のプログラム的な
コンピューターのコード的な
オートな仕組みなのかもしれない
そうだ誰かが猫を逃がしたって
猫が素直に道を横切るとは限らないじゃないか
私が小学生の頃
同級生が飼っていた猫だって
なんにも言うこときかなかった
あの飼い猫は今も生きているだろうか
し 死んだだろうか
同級生の電話番号はもう
忘れてしまったので
確かめるすべがない
自宅も今は空き地だ
ぼろぼろの自販機の
墓場みたいになっている
まあとにかくあの
道を横切る猫は毎回同じで
その仕組みは
それこそお金を入れて
ボタンを押すと
飲み物が落ちてくる
道端の自販機の筐体のように
オートマチックなことなのだろう
そして自販機は
いや 覗く窓は どの窓でもよく
お金もとい
時間も いつでもよく
私のお家のお昼 ごはん中でも
先生の家の明け方 下着をつけている時でも
とにかく風(ボタン)が吹き(押し)
カーテンがふわりとして
ほどいた私の髪が揺れて
(その時 髪はほどかれていなければ条件は満たされない)
手許にある 決まった枚数の
紙が風に飛ばされて
(決まった枚数でなければならないが私は数えたことがない)
そしてそのあとで
私が窓を閉めようとした時
あの猫は
私の人生において
遠く
道を横切る(ジュースが出てくる)
あの猫が本物か幻かは
(もしかしたら同級生が猫を横切らせてる)
私は知れないが
(あれから猫は素直に言うことを聞くようになったのだ)
次は明日か明後日か
(これはもしか なにかのメッセージ なんの)
それとも
(私は恨みを買うようなことをしただろうか)
こんなことも忘れた
ある日のこと
私はまたあの猫を見る
(オートマチックに)
その時も私は
(きっと)
まどべにいるはずだ
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 2236.4
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2020-06-08
コメント日時 2020-06-27
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 10 | 10 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 10 | 10 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 10 | 10 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 10 | 10 |
閲覧指数:2236.4
2024/11/21 23時10分10秒現在
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()があるのがおもしろかったです。 ()の部分が読者に向けた注釈みたいな意味にとられそうだと思ったけど 読むと、 この人物の感性に触れてるみたいな 印象を持ちました。 それが気に入りました
1コメントありがとうございます。 そうなんです。()はそういうニュアンスで使いました。 気に入っていただけてうれしいです。
0多宇加世さん、こんにちは。 第三連からの流れるような展開がとても良いなあと思いました。 >(その時 髪はほどかれていなければ条件は満たされない) >(決まった枚数でなければならないが私は数えたことがない) >(これはもしか なにかのメッセージ なんの) >(私は恨みを買うようなことをしただろうか) ()内で語られる、主人公の掛け合いのようなものが、とても心地よかったです。 ()が入ることによって文章全体に緩急がついていて、それがこの作品のリズムを整えているように思います。 最後までものすごい勢いでスッと読んでしまいました。 どうして猫が横切るのか? また、同級生は何者なのか? そんなことを疑問に持ちながらも、 「偶然」に起こる出来事を「必然」として語る、 その不自然なくだりを滑らかに語る作中の主人公には、なぜか妙な説得力があって、 それはまるで、ちょっとした不思議の国に迷い込んだ気持ちにもなりました。 ジブリ映画にも似たような世界観でしょうか。 素敵な作品ですね。 ぼくもこんな文章を書いてみたいなあ、そんなことを思いました。
1作者として、とても嬉しい読み方をしてくださってありがたい限りです。 どれが正しい読まれ方、というわけではないのですが、感謝してます。 素敵な作品と言っていただけて感激です。
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