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無礼者
車でだるいと言いながら取引先に向かっている最中、火葬場から煙が上がっていた。 昔、お婆ちゃんが死んだ時の事を思い出した。 あれだけ優しくしてもらったのに、ちゃんと見送ってやれなかった。 余りにも幼過ぎて、いつの間にかお婆ちゃんは家から居なくなった様な感じで 部屋とか、次の日になれば当たり前に会えるような気がしたけど、やっぱり会えなくて 危篤の時も、子供だけでお留守番してなさいと言われて、立ち合いはさせてもらえず。 理由が分からないけど行きたいと駄々を捏ねて、そんな態度にお姉ちゃんから叩かれたらしい。 葬式の時ももう会えないのに、酷く退屈をしていた。 さっさと終わって友達と遊びたい。そんな風に思っていた。 お婆ちゃん。あなたと私を繋いでいた血とお駄賃と時間は、当時の私にはこれぐらいの価値でした。 棺が閉まる時に、たまに見た昼寝をしている時と何が違うのか分からなくて そんなにしっかり見ていなかった。 もしかしたら違う顔をしていたかも知れないけれど、それを確かめる事はもう出来ない。 火葬でも多くの人が泣いている中で、黙って見ていた。 なんで燃やすのか?悲しいなら止めれば良いのにと疑問を持っていた。 活発的なお婆ちゃんだったけど、ビックリするくらいに骨が残らなかった。 それでも残った喉仏が珍しいからと、これを私に箸で取らせろと面白がっていた。 でも骨壺に入れた所で何かが起こるわけではない。 それを見てつまらないと言った私に、お婆ちゃんのお兄さんから全力で殴られた。 お前はお婆ちゃんを何だと思っているんだと殴られ続け、親戚の人が止めに入るまでそれは続いた。 あの時の感覚は何となくでしか覚えていない。 そして確かに、私は余りにも無礼で、殴られて当然だと思うけども そこまでする必要はないんじゃないかとその人を思うあたり、反省は出来ていないのだろう。 お婆ちゃんのお兄さんも、数年後に他界してしまった。 その時の私は…何を考えていたか分からない。 こんな私だから、ざまあみろと思っていたかも知れない。 多少は学んだから悲しい顔をしながら、悲しい気持ちを持ちながら見送ったかも知れない。 確かめようは無く、これは別に確かめたいとは思わない。 酷くどうでも良いのだ。今後も、今も、前の事も。 私という概念の塊を限界まで引き伸ばしたら、破けて、空気になれるのだろうか? それだけを考えている。もう、この世のフラットに溶け込みたい。
無礼者 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1463.3
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2020-04-25
コメント日時 2020-04-27
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 4 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 5 | 5 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 10 | 10 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2.5 | 2.5 |
エンタメ | 0.5 | 0.5 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 5 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
「確かめようは無く、これは別に確かめたいとは思わない」に重みを感じます。淡々とした筆致は技巧とは縁がなくとも好ましく読めました。 ただ、「酷くどうでも良いのだ」から最後までは、まだ何か書きようがあったのではないかと思います。私の技量ではどう書けばいいかというところまではわかりませんが。 「人の話」は面白いな、と思いながら読んでいました。
0お読みいただきありがとうございます。 仰る通り、その部分から雑っぽさがあるなと思います。 ただ、後付で自己肯定するならば その部分から無礼者の人生振り返り感が出ているかなとも思いました。 このキチンと締めていないで雑に終わらせる。 たまたま車で向かってる最中にふと思った感が出てるかなと思ったり、思わなかったりです。
0お読み頂きありがとうございます。 意外なお返事だったので驚いてます。 もし他人の書いたものとして読んだ時に ネガティブな感情を多くの人は持つだろうなと思っていました。 私では見付けられなかった希望。 新しい方向を見せていただきました。ありがとうございます。
1お読みいただきありがとうございます。 元ネタと言ってしまうとあれなんですけど、本当は近くに住んでいる親戚のお爺ちゃんです。 実際のお婆ちゃんは私が物心つく頃には故人でした。 子供の時とはいえ、死んだと聞いたら実感持てなかったかなぁと今でも思います。 なんか親戚で行うパーティーぐらいの感覚で、皆は美味い物食いに行くんだろ? 年の近い親戚の子は行くのになんで、私はダメんだとか駄々こねて 今思っても最低な奴だなと後悔しています。 そして今の歳になるまでに色んな知ってる人が事故や病気、災害で死んでしまったわけなんですが なんか、悲しいし暫くずっとその人の事を考えているんだけど その度にこの日の出来事を思い出して、ちゃんと死んだと想えててるのかなと 考えている自分が居ます。 こんなんだから、自分がその番になった時にちゃんと自覚持てんのか心配です。 持つ方が良くないのかも知れませんが。
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