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BUMP OF CHICKENを嫌いになる日
月船に結露がついている。 君は夜通しそいつを見つめて物思いに沈んでいた。感傷なんて君には似合わないけれど、輪郭がぼやけた患いごとなんてザラにある。ロジックはあてにならないし、彼は時折薄情だからね。 小さい頃聴いたBUMPが後ろ髪を引くように流れている。君は彼らの音を振り切ろうと躍起だけど仕方ない。彼らは仲間との共通言語でもあったんだから。目の前、皿の上の朝食はベーコンエッグ。 顔を洗い、鏡の向こうの少し畏まった男を見たら 反転。転調。素数階段を上ったその足で 君は来た道を振り返る。 君は大人になりたいんだね。 立派な社会人になったと感心されたいんだね。 成長したって友だちに見せつけたいんだね。 そう君は、そう君は、そう君は、そう君は、そう君は!ぐゎぱっ! 洗面台、背後で起こる言葉のエンスト。ブラックアウトするYouTube。毛布をかけられるパソコン。スマホは手からするりと滑り落ちた。君がBUMP OF CHICKENを嫌いになる日。それは君が背を伸ばし、自分の心に無理強いをした日かもしれない。君はBUMPから離れたがっているんじゃない。もっと巨大な、不気味ですらある、自分自身を突き動かすパワーから逃げたがっている。だからBUMPなんて共通言語、もうここまで来たらいらないだろ? いいかい?言うよ?僕は何度だって言う。凡庸と言われても平凡と言われてもガキくさいと笑われてもあるいはチープだと謗られようと、僕は言う。 君は まだ離れるな。 夢を見られるうちは。 まだ離れるな。 夢をまだ見られるのなら。
BUMP OF CHICKENを嫌いになる日 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1684.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2020-04-22
コメント日時 2020-04-26
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 4 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 3 | 1 |
総合ポイント | 10 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0.5 | 0.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0.5 | 0.5 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1.5 | 1.5 |
総合 | 5 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
沙一さん、コメントありがとうございます!ね。ですよね。この作品はタイトルを考えたもの勝ちなんです。実はツイッターのタグで「書いてもいない詩のタイトルを晒す」というのを一つ投稿したのですが、二つ目に投稿しようと思ったのがこのタイトルなんです。だがしかし待てよ?これだけ良く出来たタイトルを野に放つか?となりまして結局詩自体も作ることになりました。内容自体は非常に凡庸、平明一歩手前ですがタイトルから喚起させる意味合いが予想以上に深く決まったと思っています。書きすぎるところも削いでスリムだったとも。あとは沙一さんが考えたとおりのことをほぼ僕も考えておりました。ありがとうございました。
0失礼。ただいまのは沙一さんへの返信ですね。
0たとえば、 >感傷なんて君には似合わないけれど、輪郭がぼやけた患いごとなんてザラにある。 という箇所。 詩というものは飛躍を孕みながら不思議と密接にくっついて離れない語の一続きを持つものだと私には思われます。それを好表現と言ってしまえば簡単ですが、なかなか書けない、作れない。 この作品の魅力はこの引用箇所に代表させるとします。私はこの箇所を目にして最後まで読もうと決めました。 作者さんの言葉を紡ぐ才能には脱帽します。言ったことのあることですが、内容的に二で割りきれない奇数的な作品です。 また、詩を画像等と合わせるということは私は一度他の場でしたことがありますが、それは自発的なことではありませんでした。私の書いた詩を他の人が撮った写真と合わせるという企画だったので。 ここに合わせられた画像も瑞々しくて良いと思います。 私がやったらすべるだろうと思われますが、それをキメているのはまたすごいことです。 なにせ、たとえるなら、装幀も自分でするということですから。多才です。
0徹底して「語りかける」モードが豊かな印象を与えると思いました。 〈月船に結露〉冒頭にイメージをパンと出す、それも、ひんやりした(心の)質感と共に出してくるあたり、いいなと思いました。 〈洗面台、背後で起こる言葉のエンスト。ブラックアウトするYouTube。毛布をかけられるパソコン。スマホは手からするりと滑り落ちた。〉この辺りの描写にリアリティーがあります。
0南雲さん、コメントありがとうございます!飛躍を孕みながら不思議と密接に、というお言葉は私もほぼ同意というか大いに感じるところでして、一文の中ではおよそ、なかなか出逢わないだろう言葉同士を上手く繋げあわせた時、得も言われぬ詩情、感得が生まれるのではないかと考えています。感傷なんて君には…を高く評価していただきましたが、それを鑑みるともう少し今しがたお話した要素を持つ一節を設ければ良かったなとも思いました。画像の方も装丁と解して評価されたのは嬉しいです。ありがとうございました。
0まりもさん、コメントありがとうございます!お久しぶりです!徹底して語りかけるモードが豊かな印象、との評価嬉しく思います。「何ごとも徹底しろ」と言ったのは故野村克也氏だったでしょうか。最後に句読点なく批判的文言を封じるべく、読み手に起こり得る感情をすべて書き出し、畳みかけたのは効果的だったとも思います。リアリティーがあるとご指摘された箇所では、瞬間瞬間の出来事がスローモーションのように見える感覚を出そうと試みました。もし功を奏したのなら良かったです。ありがとうございました。
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