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火傷
毎日の中、擦れ違うこと。 摩擦によってできた火傷であなたの存在を確かめた。 そこにしっかり存在した。 それは、わたしもあなたも同じ。 同時多発的に起こった青春病患者達の恋愛ごっこにわたしもどこか酔わされてしまい、本当は思ってもいないのに頷いたり、本当は思っているのに俯いたりもした。 2階から3階への階段、スロープの角度、知らないメーカーのミルクティーを飲んで君はストローの端を噛む。 1997年にわたしが産まれた瞬間から、この世界は始まった。 産道を通り抜けてきた液体にまみれたわたしを掬い上げた助産師さんに後悔させてはいけない。 きっと、あなたは神様の使いに違いないから。 青春病患者達は今日も街を歩く。 そこら中で写真を撮り、それに適当な言葉を当てはめてSNS上電波の網の中に放つ。誰か、わたしの言葉を見つけて。 それだけがそのひとの生きていく道筋になるから。 ガードレール、知らない言葉のステッカー、角の取れた消しゴム、もはや下敷きはうちわとしての用途しかなかった。 夜は更けていく。 眠ることを諦めた瞬間に夜はどんどん長くなる。 あの子の襟足のように伸びきったこの夜にだけきっと紡げる言葉があるのでしょう。 カーテンは半開き。外の微かな灯りが差し込んで来て、それすらどこか眩しいと思った。 救急車のサイレンが聞こえる。誰かがそれに乗っている。サイレンの残響がわたしの背中をゆっくりとさする。 夕方のチャイム、鉄棒を諦めた女の子、忘れられたサッカーボールと求められていないキラカード。 擦れ違うことの数を数える。指が足りなくなっていた。 最寄り駅の改札に吸い込まれていく君を見送る。いつだって今が最後だと考える。
火傷 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1244.9
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 4
作成日時 2020-04-16
コメント日時 2020-04-17
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合ポイント | 4 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1 | 1 |
総合 | 4 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
とてもお上手やね ジュブナイルなかんじ 1997年生まれだとすると学生のころを思い出して書いてるのかな 現役高校生がもしいるんならコメント読んでみたい な詩
1「青春病患者」という当たりの強い言葉が登場している以上は、第二連の後半はきっと反出生主義的な内容になるのかと思いきや、意外にも生への神秘が描かれていた。僕からするとこのちょっとアンバランスな感じの展開に、個性を感じました。で、ああ、ひょっとして嫌悪ではなく羨望なのかなあ、と思いました。最終行は、その答え合わせとして読みました。個人的にはもう少し物語を分かりやすくしちゃうとか、パーソナルな部分の説明的内容が少し含まれているといった調子の方が好みですが、感情の表現が繊細で良いと思いました。
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