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きざし
あのシャツは根雪になった。 この頃ずっと、空のからっとした嫌味。 それでも緑のラグに積もったまま、 しんしんとみずから埋もれて。 感情を持て余すケトルの音。 気体になり損ねたいやにしたたかな結晶を ひとつ、またひとつ、つかんでは。 とげとげしいかたちを揺り起こし、 てのひらをやさしく刻むように。 草はらにひとやま、 気に入られていたシャツ。 春を追い抜いたアネモネ、 あるいは、口紅、 そこに蕾んでいる。 解けきらないまま放り込んで おしゃれ着用洗剤を線よりも多くまいた。 ケトルがかぽっとくしゃみをした。 感情を持て余す洗濯機の音。
きざし ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1414.4
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 15
作成日時 2020-03-27
コメント日時 2020-03-28
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 5 | 5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 3 | 3 |
構成 | 2 | 2 |
総合ポイント | 15 | 15 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.7 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.7 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0.7 | 0 |
総合 | 5 | 4 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
うまい、と言うと技巧と言うように聞こえるがそれをもう感じさせない自然な巧さ。あのシャツは根雪になった、という一行目などは詩的なイメージそのものだと思った。すべての連のイメージがうつくしい背骨のように繋がってカーブを描いている。とてもうつくしいカーブを。(すみません、自分の頭の許容量を超えました。カーブがどうとかなんとか、とにかく素晴らしい)
1音は滑らかだしイメージも鮮明。詩の姿が良く、読んでいて気分がいいです。 一行目が特に鮮烈で「おおっ!」と思う。二行目も秀逸です。「根雪」がメタファーでなければもっとよかったのだけど、後を読んでいくと具体的な情景の比喩とわかり、そこでいささか興醒めました。 全体に擬人法が多用されていて、スタイリッシュでかっこいいんですが個人的にはちょっと鼻に付きます。軽みのある抒情のセンスは好みなんですが、日常的な情景や感情をモダニズム的な比喩で煌めかせているだけなのかなとも読める。読後の余韻、感銘は正直薄いです。そういうものを狙っていないと言われればそれまでですが。
1帆場 蔵人さま、コメントありがとうございます。 詩的な感想をいただけて嬉しい限りです。 >カーブを描いている。 まさにこれは私が意図したことですので、特にうれしく思います。 励みになる感想をありがとうございました。
0石村利勝さま、はじめまして。 コメントありがとうございます。 >「根雪」がメタファーでなければもっとよかったのだけど、後を読んでいくと具体的な情景の比喩とわかり、そこでいささか興醒めました。 なるほど、大変勉強になります。ある情景からこのフレーズを思いついたのが制作動機でしたので、もう少し考慮して、現実からもう一歩遊離させたような構成にすべきだったのかもしれません。 感想の最終段落についてですが、こちらも大いに勉強になります。 >日常的な情景や感情をモダニズム的な比喩で煌めかせているだけなのかなとも読める。 これに関しては「狙ってやりました」という感じですが、 >読後の余韻、感銘は正直薄いです。 これは全く狙いにないので、猛省するばかりです。 もともと擬人法に徹して制作するのがコンセプトでしたが、正直ちょっと鼻につくかなというのも同感です。ただ、当時の文章から思い切って改稿する勇気がわきませんでした。 分かる方にはやはりわかってしまうものなのですね、今後は意識してみようと思います。 後学になるコメントをありがとうございました。
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