「もう大掃除の時くらい、あんたちゃんとしなさい。」と、母に口煩く言われて行う事にした。床はこの前、スナック菓子を溢した時に隅々まで掃除機を掛けたから、別に改めてやらなくても良いだろう。となるとカーテンや窓と考えたけど、換気とセットの掃除は最後の方が良いと思うので、ろくに凝視もせず書類やらを放り込んでいる、机の引き出しを綺麗にしようと思った。
引き出しを開けると、いい加減に平積みにされて高校時代のプリント、携帯料金のハガキ、封を切られていないままとっくに終わっている案内やらが入っていた。どれも本棚の漫画本や卒業アルバムみたいに、私を引き留めない。一見したら直ぐにゴミ袋の中に投げ捨てた。どうしてこんな物を無駄に溜め込んでいたのだと自分に呆れた。
そうやって机の中身を減らしていくと、1通の年賀状が入っていた。そこには数年前の干支がプリントされていて、仲の良かった友達への新年の挨拶を書いていた。だけど、宛名の所には名前と住んでいる市までしか書かれてなくて、番地も郵便番号も真っ白で書いた形跡が無かった。確かこれは気紛れで、もしかしたら実家に帰って来ているかも知れないからと書いた年賀状だ。
私と彼女は小学校からの付き合いで、高校からは別だったけど、学校が休みの日は連絡を取って家に遊びに行ったり、何処かへ出掛けたりする仲だった。誰が見ても仲良しだった。だけど、私は彼女の事をよく知らなかったんだ。あれだけ将来の事や恋愛、悩み事を沢山話して来たのに、彼女が此処に住んでいるってちゃんと知らなかったのだ。私と彼女の関係は、実はそこまで深く無かったのだと知って、確か書くのを止めてしまったのだ。
彼女が上京してからは何度か軽いメールをしたけれど、それもお互いに忙しくて数日を跨いで返すようになり、いつの間にか全くメールをする事も無くなった。今このスマホには、ガラケー時代からのアドレスがずっと引き継がれている。私は「お久しぶりです。お元気ですか?」とメールを送信した。すると直ぐに返信が来たけど、このアドレスは使われていないというお知らせだった。
もう、彼女がどう過ごしているのか分からなくなってしまった。家庭を築いているかも知れないし、下手したら死んでいるかも知れない。このアドレスも何時から使えなくなったのか分からない。3つ前のアドレスとかになっているかも知れない。多分、彼女の中に私はもう居ない気がした。私もこの年賀状を見るまで、彼女の事なんて全く考えないで生きてしまったのだから。2人の仲にもう繋がりは起こらない。私は年賀状をゴミ袋に投げ捨てて片付けを続けた。そして、窓拭きをしている最中に彼女の事なんて忘れてしまっていた。
作品データ
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作成日時 2020-03-18
コメント日時 2020-03-19
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
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2024/11/21 23時14分13秒現在
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人間関係の儚さをストレートに感じました。
0その時には確かな関りがあって 何でも知っているんだと思い込んでいるけど 実際分からないことだらけってありますよね。 今も仲良くしている友人はいますけど 住所や家の電話番号、働いている場所とか 案外、曖昧だったりします。 人生を通した時に これから、またはこれからも関わる大事な人 あなたの事を多くの事を知ってるよって人は 案外いないのかも知れません。 それでも悩んだり好きになったりして なんだか面白いですよね。 実は曖昧な人間関係なのにね。
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