名前を知らない月だった
寒さのなかに大切なものを欲しがった
僕は濡れた髪のまま公園にいた
そこで青白い夢を抱えて
雪が降るのを待っている
速度だけが乗っていて
体は斜めに研ぎ澄まされた
あの日
僕らはわかばを合言葉にして
砂っぽい航海に乗り出したね
君は本棚に火を放ち
衣服も写真も燃えてしまった
火はいつまでも瞼に残り
僕たちの旅は熱かった
そこで君も知っての通りだが
僕らはちょっと惨めなくらいに勝利した
そして忘れもしない二十一歳の夜
あきれるほどの煙の中で
僕らはとうとう父親殺しになったのだ
けれども君はそのことに気が付かなかった
旅が終わったとき
僕らはぼろの無念を雨くさい物陰に捨て
挨拶もせずに別れたね
誰からも
それ以外のやり方を教わることのない旅だった
記憶と同じ褪せ方をする
街は春になっていた
作品データ
コメント数 : 2
P V 数 : 1353.2
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作成日時 2020-03-05
コメント日時 2020-03-06
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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閲覧指数:1353.2
2024/11/21 19時41分26秒現在
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初読でのコメントになりますが、ややノスタルジックではありますが、清涼な感を受けました。それは、髪が濡れたままに公園にいる情景描写が上手く効いているようにおもいます。個人的なことですが、私は髪を濡れたままよく外出しますので、更に読後感が心地良くあったのだと思います。また、父性からの解放という意にこの作品を捉えていて、その意において、置かれている「航海」や「旅」といった事象が通過儀礼のメタファーに読め、作品の構造としての強度が感じれます。読んでよかったです。
0ガムのくつべらさん、コメントありがとうございます。 この詩が「なぞり」だというご指摘、大変ショックですが、これはおっしゃる通りです。なんだかなあ、という投稿前の煮詰まった感じは「なぞり」だったからなんだ、と納得しました。全く至らず非常に無念ですが、とても勉強になります。 読み返してみると、とくに「挨拶もせずに別れたね」が我のことながら気持ち悪い、言われてみれば確かにその通りです。 一応、この詩は自分の経験を基に書きました。だからナルシストな感じになったのかもしれません。「あの日」、僕は風呂あがりのまま公園に出たもので「お前に何がわかる!」と一瞬沸騰しかけたのですが、そんなことを言ってる時点で失格ですし、考えてみれば詩は日記でも説明文でもないのでした。 現実を直視するのはとてもツラいですが、やはり匿名で投稿して良かったと思います。もしよかったらまた次の作品にもコメントを頂ければ幸いです。よろしくお願い致します。
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