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無銘の者
足を止めて 息も止めて 地平に砂が降り積もるのを見る者よ 君はこの街がどうなったかを知らないだろう 割れた蛍光灯や息をひそめて公園を飛ぶ雀たちを君は見ない 実にあの日から長らく誰も 君を訪ねはしなかった 君はもう 自分が何者であったかさえ 忘れてしまっているのである 幾何的に完全な固い氷の街底に 思考する石の棺が並び立つ 破れた靴を履く男 剃刀を買えない男はここには居ない その代わり 辿るべき過去を失くした者が言葉を買い 洞窟の目で部屋の壁紙を汚している 短い朝が訪れた日は 確かに希望を駆け出して 手を振り 楽しく笑いあうかもしれないが 最後にはこの砂の綾に眠ることになっている 我々は 本当ならば泥のように混じり合って一つになるべき定めであった だが皮肉なことに その思想の毒は禍々しいほど大陸を割り 愛と勇気は黒い金庫の奥へと隠れ 償いのように重い鉄扉が内から固く閉ざされた ああ、地に立つ者 目の者 沈黙する者達よ 君達はいつか見下ろすばかりの木漏れ日であったのを覚えているか 紅葉よりも赤く天体を飾っていたのを知ってるか 「時計は五分遅れに鐘を打ち 去れば都とスニーカーに雨降る眠る」 今となってはそうと言いたくはないものだ ……そして我々は 神経に白い刺青を入れて 冷たい笑顔をはりつけたまま 目を閉じて 蛇の中心に封印された 暴力があらゆる矛盾を克服し 百年の時が経った後 世界は乾燥に覆われた みなしごの震える背中の時代である
無銘の者 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1122.8
お気に入り数: 1
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2020-02-29
コメント日時 2020-03-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
みなしごの震える背中の時代ですか。単なる閉じこもりの君とも思えない。この街は本当にどうなったのか。世界観が問われているような気がします。訪ねられない君。砂がキーワードですかね。砂の綾に眠る。地平に砂が降り積もるのを見る者。君が見ない物。最終連の時間の経過は再びこの詩を最初に戻って読みたくさせるものがありますが、世界観。世界が滅んだあとや恐竜などを想起させられます。 >幾何的に完全な固い氷の街底に >思考する石の棺が並び立つ >破れた靴を履く男 >剃刀を買えない男はここには居ない ここを読んだだけでもIce Age(氷河時代)を想起して、マンモスやどうしても恐竜時代を想起させられてしまう。第三次世界大戦は起こってしまった後なのか、地球規模のパンデミックが跋扈した後なのかと思いました。
0コメントありがとうございます。この詩を無理やり書いたとき、僕は出来に少しがっかりして、まさか最後まで読んでくれる方がいるとはあまり期待しませんでした。 直し方がわからないのでそのままエイヤで投稿したものですが、パンデミックや氷河期など、一日経ってご指摘を受けてみると、確かにやたら世界を荒らし過ぎたと今は反省しています。
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