早春
どこからかかぼそいクラリネツトの響きが
春のたそがれに暮れ残る
野末にははてしなく僕に語り掛ける声
降りそそぐ七色の光
けれどたれも僕の歩いた道を知らない
たれも僕の見た花々を見てゐない
翼をなくしてしまつて もう天使たちは
決して僕に微笑んだりしない
愛されてゐた季節の記憶を投げ返し
ひとつ憶えの聖歌だけを口ずさみさまよひながら
やがて春の野に息絶えるものたち
お前が何に傷付いたのか
僕が何に傷付いたのか
どれほどのかなしみがひとつきりの僕らの夢を遠ざけたのか
問ひかへす内に
何もかもが
僕には
分からなくなつた
うすむらさきの菫の野辺を
甘くしめつた微風がわたり
置き捨てられた神々の宝石を柔かく濡らす
けれどたれももう花束をつくりはしない
僕をやさしく包んだ唇のほのかな香りは
もうどこにもありはしない
作品データ
コメント数 : 4
P V 数 : 1495.7
お気に入り数: 3
投票数 : 0
ポイント数 : 7
作成日時 2020-02-29
コメント日時 2020-03-06
#現代詩
#縦書き
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 7 | 7 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3.5 | 3.5 |
閲覧指数:1495.7
2024/11/21 22時55分14秒現在
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僕に語りかけてきた声の正体、一体何なのでしょう.......ドキドキ.......。
0何なのでしょう.....ドキドキ........ して下さる方がいて、よかったなあと安堵感。 (レスが遅くなりまして大変失礼致しました。)
0印象的だったのは > けれどたれも僕の歩いた道を知らない たれも僕の見た花々を見てゐない と > やがて春の野に息絶えるものたち お前が何に傷付いたのか 僕が何に傷付いたのか です。 とくに、「やがて春の野に息絶えるものたち」には、はっとしました。春って、冬眠していた生き物たちが目覚めたり、花が咲いたりと誕生のイメージが強かったのですが、その陰で春に息絶えるものもあるよなぁ……と。 失ってから気づくもの、とか、そういう切なさを感じました。 また、旧仮名遣いが作品の繊細さとマッチしていてたまらないです。好きです。
1杜 琴乃さま、ご高覧ありがとうございます。 旧作で、今では書けなくなったタイプのベタな抒情詩ですが、本来私はこういうベタな抒情詩が大好きで、自分としては好きな作品です。古臭すぎてここの読者のアンテナにはまるで引っかからなかったようですが、好きと言って下さる方がいてよかったです(笑)
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