この町へ出稼ぎに来ている生産者は、ブランド名を付けて働いておりました。この町はテキストを産業としており、いかに上品なテキストを生み出し収益を得るかを競い合っています。しかし、それに不満を持った一部の生産者達は町の議会が行われた日に抗議をしました。
「我々は、多くの者が出てはやって来るこの町でずっと長く、しっかりと働いているではないか!なのに、向こうの町で稼いでた、ちょっとした有名人さんが気まぐれに来て働いた時に、どうしてそんな高額の給料を払うのだ?我々がそんなに働けていないとは考えられない!我々はこの町を愛している!だがもうこのブランド名にへばり付いたイメージを全てを投げ出し、本当の働き者は誰か!本当に上品なテキストを生産しているのは誰か、名前ではなく質で決めろ!」と町へ意見したのだ。
この意見はたまに議論としてはあがっていたのだが、とうとうその声が大きくなった事から、本会議に持ち込み何日にも渡り話が行われるようになった。そしてこの町に1つの制度が追加された。
「えー、生産者さんのブランド名でテキストの質を評価されている。そんな意見が最近出ております。確かに、このブランド名から出たテキストだからというだけで、多くの人の目に止まったり、逆にろくに見向きもさせれない事もあります。生産者さんが売りにしているもの、得意にしているテキストとは違った新商品が出た場合、それが良い試みだと評される場合もありますが、アナタらしくないと言われる事も有ります。テキストを産業としている町として、ブランド名を付ける事が生産者さん達に不利益な環境になっているのではないかと、我々は会議しました。そこで!これからは任意で、ブランド名を隠した状態での生産を可能といたします!これにより背負っていたブランド名からテキストが離れ、純粋にテキストの質だけが正しく評価されるわけです。強制はしません!自分の背負って来たブランド名の重さや軽さ、生産したテキストの質の良し悪し、そんなのと向き合うには良い機会だと思うので!言える事は1つ、今後も皆さんのテキストを楽しみにしております!」と町長は高らかに宣言をした。
多くの生産者達はブランド名をJohn Does Jane Doesで名乗りテキストを生産し出した。テキストの生産元は今月、一番を決める会で決定されるまでは明かされない仕組みになっている。これに対し町の反応は様々で。
「私はこれまで通り、ブランド名を隠さないで生産します。私は別に一番の働き者が誰なのかとか、質の良し悪しとかそんな事に興味はありません。見て欲しい人達にちゃんと私のテキストが届くように、John Does Jane Doesとは名乗らず行きたいと思います。ただ…もし仮にブランド名を隠した所で、私のブランドは周りに埋もれない魅力があるので直ぐにバレちゃうでしょうね。」
「俺はブランド名を隠して生産するぜ!この町で俺は長く働いて来たが、どうしてあいつが俺よりも稼いでるのか疑問だった!今回の制度で看板が外れた事で、ブランド名に甘ったれたアイツを叩きのめして、俺の方が上だって思い知らせるチャンスが出来たんだ!まぁ、アイツがこれに乗らないと意味ないんだけどな…。ま、他の奴でも良いさ!ビックリするようなテキストを生産してやるぜ!」
「ねぇ、これってどう思う?あたしは、きっとあそこのブランドのテキストだと思うの。今までにない試みをしているけど、好んで使ってるテキストが一緒なの。私はあそこに通い詰めてるくらいだから間違える筈が無い!間違えたらショック…。あ、ここのブランドさんは名前を隠さないんだ!今月もいつも通りで安心する。」
「これは凄い試みだよね。僕達も試されちゃってるよ…。見つけてみろって形で来られた時に、僕は何処までそこのブランドのテキストを理解していたのか、今回から分かっちゃうよね。逆に向こう側が見つかりたくないって形で来た時に、僕達は当てるつもりで騙されなきゃいけないんだから。」
いつしか人々の間で町はJohn Does Jane Does Town、名前も無き生産者の町と呼ばれるようになった。ただ1つ依然と変わらない事がある。それは今日も好き勝手にテキストを生産してるって事だ。
作品データ
コメント数 : 7
P V 数 : 1612.3
お気に入り数: 1
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ポイント数 : 11
作成日時 2020-02-25
コメント日時 2020-03-05
#現代詩
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 3 | 3 |
エンタメ | 2 | 2 |
技巧 | 3 | 3 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 3 | 3 |
総合ポイント | 11 | 11 |
| 平均値 | 中央値 |
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1.5 | 1.5 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 1.5 | 1.5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 1.5 | 1.5 |
総合 | 5.5 | 5.5 |
閲覧指数:1612.3
2024/11/21 19時47分57秒現在
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ビーレビが匿名になった事で、私の名前にあるイメージを捨てたくて書きました。 以前はイマラチオの名前を借りてやりましたが 今回からは名前を変えなくても出来るので大変満足です。 名は体を表す、名前負けなどで苦労している人達っていると思うんです。 酷い所では、あの地方でこの名前をしている人はってのも未だにあるそうです。 名前じゃなくても男だから、女だからとか 自分についているジャンル、属性、カテゴリー。 それで苦労したりすることあると思います。 じゃあ、それを隠せるならどうなるのか?と思い書いてみました。 読んでいただきありがとうございます。
0タイトルとそれを上手く詩にも取り入れていて面白い散文詩でした。内輪にみえて実はだいたいどこの創作サイトでもありそうな開かれた作品。
0さりげなく書かれてあるので一見なんでもないようですが、台詞回しがおしゃれで、各登場人物に個性があり、日本語としてなにか「しっかり」しているなあと思いました。 というのも、ひょっとしたらすごくびっくりされるかもしれませんが、長年ツイッターに入り浸っている僕はだんだん正常な日本語を失い、「ちゃんと書く」ことができなくなっているのです。ので、一定の文量を書きながら言いたいことをしっかり表現できることは、すごいと思います。 ビーレビの匿名性については、むしろ実装以前の方が盛り上がっていた感もありますが、それは表面上のことで、今がもしかして「嵐の前の静けさ」なら面白いと僕は思います。もしそうだとすると、なにか予言めいた事件のかおりが感じられるパート、これからのことに言及する登場人物があと一人くらいいても面白いかなと思いました。しかし話の繋がりが今の段階で十分いいので、そうすると逆に論点が色々散らばって、まとまりがなくなってしまうかもしれませんが。。
0匿名制ならではの作品ですね。正直、私はこれを花緒さんが書かれたのだと初読の時に思っていました。貴音さんのその書く技量はピカイチだし、以前から申し上げています通り熱量が大きい。ただ、逆に言えば、その熱量が「空虚で自我無し現代詩トレンド」にマッチしていない側面にもなっている気がします。それをみうら個人としては好ましく思っているのですが、一方で残念な気持ちにもなります。
0新制度の事を考えて書いたので内輪なんだけど 何処にでも通じるものを意識してみました。 この町で起こっている事は姿形を変えながら 私達のネットや外で蔓延しております。 匿名になりたい、匿名になりたくない。 私の詩を通し、自己証明と向き合ってもらいたい 私が現段階で感じた答えの一つは 私は匿名になる事が出来たようです。
0いすきさん ありがとうございます。 私はペンキぶちまけみたいな詩が好きで ペタペタあーでもないとか言いながら絵を描くのが得意ではないので そう言ってもらえると、上手くで来たみたいだなと安心しております。 例えば、自作自演をする様な人間が出てきたりとか アイツの作品だと決めつける人間がいる 誰が書いているのか覗き見をする とんでもない有名人が名前を隠して現れたとか そんなんとか出来ますけど 私は基本、この匿名性という取り組みにポジティヴを求めているので そんなネガティブな事はあんまり書きたくはないですかね。 イキなりげんなりしません? これは、悪い方向に行った時に 私なり誰かが続編なりで書けばいいと思います。 匿名性の町の話の1話目に詰め込む内容ではないと思います。
1私が思うにですが 空虚で自我無し現代詩トレンドはガラケー時代にミッキーとか空の写真を背景に 余りにも誰にでも言える事を、自ら進んで創作しちゃって生み出されたポエムです。 https://girlschannel.net/topics/2271509/ 私は本当の意味でこれが空虚で自我無し現代詩トレンドだと思います。 他にも言うなら、認定領域を限りなく広げた自由律俳句。 純度100の日常会話や独り言をポエトリーリーディングや即興朗読とした場合に出ると思います。 誰でも書けすぎて自分が存在しないし、存在できない領域です。 ビーレビに限らず、これは…「詩だね」と呼ばれる、呼べるものには 三浦さんの言う通り、矛盾してますが熱があります。 詩になるってことは個を持ってしまう。 個を付ける為には熱を持たないといけないんです。 私が燃えすぎているのは分かります。 私は嫉妬や傲慢、強欲をエネルギーに書いているからです。 こいつはエネルギーだけど、長く手元に置いておきたくないのです 弱火でコトコトなんてしたくないのです。 最期に私の中の空虚で自我無し現代詩トレンドを このビーレビで再現している人物を紹介したいと思います。 この方は、限りなく名前があるのに透明です。 批判に聞こえるかも知れませんが ビーレビに来てなさそうなんで紹介します。 https://www.breview.org/keijiban/?author_id=91
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