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そして僕(ら)は墜落した
目を覚ますと背の高い木が 細いながらも悠然と立っていた 柔らかな緑色の草は 僕のコケた頬を優しく撫でてくれる 両手で地面を押して立ち上がると その背の高い木は四方を囲んでいた 上を見ると赤や黄や緑の葉が サバルヤシの様な細長い葉が 20メートルはあろうかという木のてっぺんに 沢山、フサフサと生えていた そしてその隙間から木漏れ日が まばらに地面を照らしていた 僕は矢印の書いてある…いや 正確には矢印に似た何かかもしれないが その看板に従って歩き出した 途中、白と青のキノコや虹色の鹿を見た いや、どちらも鹿や キノコとはかぎらないが とりあえず限りなくそれに近かった しばらく歩くと木々の群れが途切れ 目の前に濃い霧が現れ僕を覆った 青々としていた地の緑も 茶色でぬかるんだ地面になった 僕は何故かとてもとても 今までにないくらい不安になった 背後が漆黒の闇に呑まれ 綺麗さっぱりなくなっていっている気がした 実際に背後を確認した訳では無いが あまりにその感覚が鮮明でリアルで 恐怖心にかられ走り出した 霧を気にしている暇はない 白い靴に泥が跳ねて汚れていく 青いラインとは別に茶色い模様が入る 坂があったらしく少しつまづくが それにすら気を止める余裕はない 立ち止まるということは 死を表していたのだ ジグザグに細かく上り下りを繰り返す坂から 豚や牛(のようなもの)の叫び声が聞こえる ぶぴー も゛ー だんだんぬかるんだ地面が 動物の体の上を駆け抜けている様な気分になる ありえないけど本気でそんな気がしてくる 豚や牛の背中を走っていたのか?分からない とりあえず僕は死ぬ物狂いで走った 景色は変わらず白いが前へと進んでいるはずだ 息が苦しく胸がヒューヒューと鳴る 視界は霧と微かに流れる涙で朧気で 足は何度か捻りズキズキと痛む 脳みそももはやまともな思考など出来なかった ただ、闇から逃れ生還する それだけを考え走った そしてついに、僕は小屋を見つけたのだ 小さな小屋を見つけたのである それが幻覚かはたまた真実かなんて 今の僕には関係なかった たったひとつの救われる道だったのである 僕はその小屋の扉に虫の息で手をかけた ビリビリと手に電気がはしる 扉が開くと安楽椅子がゆらゆらと揺れていた 後ろを振り返ると扉の向こうは黒1色であった 再び部屋の中を見ると 安楽椅子以外は何も無い ただひとつ 安楽椅子だけが揺らめいている その椅子に腰掛ける そしてしばらく考える ここはどこなのか 自分は誰なのか どこから来たのか 過去に何がなったのか ここにずっといたのか 元の世界があるのか… ……………… 同じような言葉が炭酸の泡のように浮上しては 次々に弾けては消えていく 僕はまいってしまって汗だらけの額を 袖で拭い背もたれに思いっきりもたれた たちまち椅子は崩壊して 僕は仰向けに倒れた 天井を見るとそこにはでかでかと (彼女を探せ、西へ進め)と書いてあった 赤いペンキで大雑把に ギリギリ読めるくらいの字の汚さだった 「彼女…彼女…あ!」 ここで僕は少しだけ思い出したのだ 僕は(関係性は思い出せないが)女性を乗せて 汚染された惑星を脱出したのだ 機械トラブルでそのまんま星に不時着したのだ 宇宙船はどこへ消えたのだろう 大気圏で燃え尽きたいや、有り得ない こんな場所だ鉄を飲み込む生物がいると考えるのが妥当だ あの女性はどこへ消えたのだろう 鉄を飲み込む生物がいるとしたら… こうして入られない 唯一僕の事を知っている人なのだから この天井のメッセージも きっと彼女によるものだと思われる 僕はあの空から落ちてきたのだ 惑星から逃げてそして… そして僕らは墜落した
そして僕(ら)は墜落した ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1268.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 36
作成日時 2020-02-05
コメント日時 2020-02-21
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 12 | 2 |
前衛性 | 2 | 2 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 11 | 1 |
技巧 | 10 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 36 | 6 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 6 | 6 |
前衛性 | 1 | 1 |
可読性 | 0.5 | 0.5 |
エンタメ | 5.5 | 5.5 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 18 | 18 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文