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Phantom Pain
切れたその先 バッドエンドのその先 双眼鏡で覗くもまやかし 惑わし棲みつく幻 心地良いテノールと 息を切らしたソプラノ 嬌声 むせ返るスパイスの香 悦んで溺れて 寄せては返す 確かに存在するものだった 枯れた心 大人は孤独に弱いから 潤い求め彷徨う 中が乾こうが 滑稽な操り人形 糸は切れ 痛覚は麻痺していたはずなのに 身体を蝕む 此感覚はなんだ 疼く その先はない しかし疼く 苦痛ですら懐かしいのだ 自ら千切った縁を 糊付て どうにか 形を整えようとするのだ 惨めであることに変わりはない 依存から目を逸らす 逃避 時間差でやってきては 気が済むまで苦しめて 元通り 私の元へ帰る確証は無い 藁にもすがる思いを携え お喋りな花達を踏み散らす マタタビを頂戴 愛してるの言葉と共に
Phantom Pain ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1388.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 5
作成日時 2020-01-16
コメント日時 2020-02-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 2 | 2 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 1 | 1 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 5 | 5 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0.5 | 0.5 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2.5 | 2.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
一見して先ず感じたのは、難しい漢字が多いということでした。これはネガティブなことではなく、詩の内容に照らし合わせて後述します。 最初の二行からして、何かの事後であることを読み手に示唆されているのですが、それが何であるかはわかりません。しかし、それ自体が「まやかし」であり、「幻」であるということ。とにかく何となくわかるのは、何かの事後であるということ。 テノール=男声、ソプラノ=女声であることから、男女がいる場面を想起させますが、具体的に「いつ・どこで・だれが・どうした」というような具体的なものに変換できるわけではありません。しかし、「声」と「香」を交わし合う仲であるだろうことがこれまた示唆されます。 そして、「まやかし」や「幻」と呼応するようにして、「確かに存在するものだった」というのは、読み手への語りかけであると同時に語り手が語り手に自ら言い聞かせているようにも聞こえます。ここで「糸は切れ」と、冒頭にある「切れたその先」の内容がようやく垣間見られることになりますが、これもまた何かの事後であるという強調になっています。 「痛覚は麻痺」しつつも、「身体を蝕む 此感覚」という題名の「Phantom Pain」がここで繋がってきます。「此感覚はなんだ」と語り手が述べているように、その正体を読み手はもちろん、語り手すらわかってはいないのです。しかし、「懐かしい」という実感だけが語り手にとって唯一わかっていることです。 この詩における隙というか、鍵になっているのが「自ら千切った縁を(…)」の連だと感じました。やはり、これもまた何かの事後であるということ、取り返しのつかない状態になってしまっているということの表れです。ここで、最初に記した「漢字が多い」ということと繋げます。あくまでこれは私見でありますが、「漢字が多い」ということは、表現・言いたいこと・メッセージが遠回りになるのだと僕は考えています。おそらく、この世の中の言いたいことやメッセージというのは、簡略化しようと思えばいくらでも簡略化できると思うのですが、この詩においてはそれを「漢字」という装飾によって、できるだけ中身を見えないように飾っているように思えたのです。だからこそ、具体的な場面は語り手だけが知り得るものであって、「説明」が読み手にされていないのです(説明するべきだと言っているわけでは決してありません)。しかし、この「自ら千切った縁を(…)」に描かれている語り手の姿は、何も難しい表現がされていないことによって、限りなく素に近い状態であるように見えました。詩行と同様に装飾のない語り手の姿。 続く連では、「気が済むまで苦しめて 元通り」とありますが、これは「Phantom Pain」という痛みによって、そこに唯一残されたものが形のない「Phantom Pain」と「私」であって、あとのものは「まやかし」や「幻」でしかないと。つまり、糸が切れてしまった以上は、かつてあったことを保証してくれるの(残されたもの)が「Phantom Pain」だけなのでしょう。 最終連では、単にかつてあった過去を見据えるだけでなく、焦点はこれからのことへ向ける、つまり、これから望むこととして「マタタビを頂戴」という欲望を表明されています。「愛してる」という言葉を欲するのは、途中にあったテノールやソプラノは内容を剥ぎ取られており、具体的な言葉は何ももはや残されていないからこそ、声の中身である「愛してる」という言葉を欲しているのだと感じました。
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