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習作5.モンタージュとしての彷徨
Ⅰ あらゆる言葉はおまえのために生まれたわけじゃなく、しかしそれを知っていながら、よく懸命につかまえようとするものだね。そんな性情のおまえの黎明、あるいは低徊を、坊間が認める必定は決して無いけれど。 おまえの詩は決して多くの人に愛誦されるものでない。たとえば暇を持て余した憂鬱な学生が散読した時に、目をすべらせていったすべてで。むしろその光景のほうが哀感を誘うもので。場末に流れるしめやかな葬送曲に乗せて、見捨てられたその詩の一聯を、おまえの代わりに歌ってやろうか。 Ⅱ 識閾下に発生したもの・ことを闊達に表現するのは容易でなく、おまえは焦慮してばかりいる。そんな無益に身をついやして、やすらう恋人たちに見向きもしないでさ。机の上には今日も何も生まれない、飾りとしての蘚がノートのブランクを見つめているだけ。 ああ!閑寂…… ふるびた窓から見えるのは、この侘しい土地のランドマークとしてそびえ立つ、名も無き鉄塔、全くの無感興だ。だからって、怏々とした白面で荒蕪地を歩くなよ、そんな詩境ってなんだよ。沃土を駆けて、涕泣しろ、眷恋しろ。そういうのが篤学者よりもはるかに高い位置にある、詩人だけの情操を生み出すんじゃないだろうか?だって今のお前は、まるで、信条のない研究者だ。またそういった種類のpathos、飽き飽きとした。 Ⅲ ……光芒だ! いつしか机に伏していたおまえは、肘付きが自分のよだれに濡れている事などどうでも良かった、出し抜けの紛糾! 乱調子のコミックオペラが頭に鳴り響いて、なるほどこれが春雷であり瀑布であり、殉情であるのだなと瞬時に理解した。未明、部屋の香気と高揚感におまえはすっかりうっとりして、これは立派な叙情詩であると満足げに黒い紙を見つめていた。毫も偉力は感じられなかったけど、なるほどおまえが詩人として雌伏している証左くらいにはなるかもしれない、部屋の一隅で宵っぱりのおれは思うのだった。 *尾崎翠「第七官界彷徨」を読んで、自分の中に無かった言葉を取り入れ、詩をつくった。ただし、全く別の様相を呈した世界が創造された。
習作5.モンタージュとしての彷徨 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 959.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 3
作成日時 2020-01-10
コメント日時 2020-01-10
項目 | 全期間(2024/11/22現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 1 | 1 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 3 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文