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失踪
いくつもの帰路が 消えることが耐えがたいから 思い出の首尾をつなぐ手を止めて 描きなぐったいくつもの 壊れる駅 閉じてゆく家々を 捨てることにした ここへはもう戻らない きっとある朝 ぼくは誰もいない追憶の町で春の ぬるい霧に五体を晒していて いや、すぐにここを出なければ ふやけた体にあらゆる 建築の色は侵入するだろう 失踪はぼくの 内部を取り戻すためにあるから 走れ、目をつむってほとばしる悪寒をかみ殺して木漏れ日からまた 木漏れ日へと しかし 町を出るとたちまち狂いは生まれはじめ 靴底のやぶれからほつれる光は ひとりで舵をとって泳ぎだした 色彩は乱れて 白い地面をはげしくねじ曲げ すべての投影を飲み込んでいく からだの穴という穴から垂れてくるものは 涙ではない だから立ち止まることは無い 本当は気づいていた この夢から覚めないことを 極彩色の 虹の洪水が遠くの海に流れて 一本の水平線にまとまっていくのを 朝って 再生とかの暗喩でもなんでもなかった おぼろげに光る 新たな境界を透かしてみれば 自分の両手はもうきらきらしはじめる
失踪 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1994.0
お気に入り数: 2
投票数 : 0
ポイント数 : 18
作成日時 2020-01-07
コメント日時 2020-01-10
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 4 | 0 |
前衛性 | 3 | 0 |
可読性 | 2 | 0 |
エンタメ | 2 | 1 |
技巧 | 2 | 1 |
音韻 | 1 | 0 |
構成 | 4 | 2 |
総合ポイント | 18 | 4 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.3 | 0 |
前衛性 | 1 | 0 |
可読性 | 0.7 | 0 |
エンタメ | 0.7 | 1 |
技巧 | 0.7 | 1 |
音韻 | 0.3 | 0 |
構成 | 1.3 | 2 |
総合 | 6 | 3 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
身体にまつわる表現の独特さと「失踪」の語にドキドキしつつ拝読させていただきました。
0あか さん、お読みくださりありがとうございます。
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