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【選評】仲程氏「サンショウウオ」:言葉の選択の重要性と必然
1.ジュブナイル ジュブナイルとは若者(16~18歳くらい)を指す用語である。 2.マチュア マチュアとは、「熟した」ものを指す用語である。 3.ロートル 老人を指す用語。やや批判的ニュアンスで使われることが多い。 * まず全体の流れとして、主人公の現在の姿が何なのかはよく分からないが「サンショウウオ」に憧憬に近い感情をもっていると考えられる。「エラ」という単語や全体的な構成などから、水辺っぽい世界観を思わせる。 * 本作の素晴らしい所は、特段「水」「川」などの用語が出てきていないにも関わらず、どこかしら水っぽい、ゆったりとした光景を思い浮かべさせるに至っている点である。 その秘訣としては、用語選択の秀逸さにある。 1.は「わかもの」「ティーンエイジャー」など様々な選択肢が存在するが、あえて「ジュブナイル」を持ってきたあたり。「ジュブ」や「ナイル」は、全く関連していないにも関わらず水っぽい情景を表すことが出来る。 2.3.に関しては、「ズラし」の効果があると考える。全部が全部同じような用語を選択してしまうと、表現したい部分が埋もれてしまう。あえてマ行、ラ行の用語を入れることが、詩文全体を引き締めるアクセントとして機能する。 感嘆符の使い方も極めて絶妙だ。 >うわーって >へぇーって といったワードは後半に登場するが、これが前半に来ていたら本作は名作たりえなかったかもしれない。 ・ロートルとしてのコンプレックスを描写した前半 ・サンショウウオに焦点を当てた中盤 ときて、感嘆符によって緩やかな感情と共に締められる。 つまるところ本作ではコンプレックスによる悲愴を捉えたかったのではなく、ロートルに抗うちょっとお茶目な主人公を描きたかったということが色濃く浮き出る。 >みえへんせかいもみえとるんのやろ こんな文章が最後に現れるが、これは前述した「抗い」であろう。タイトルがサンショウウオなのも、どこか主人公の反抗、それもどこか可愛らしいタイプの反抗を感じさせる。 本作は他の作品にあるような目を引く要素や圧倒的なインパクトこそ若干薄いものの、用語選択、構成、テーマが非常に丁寧に纏められた良作だ。以上の理由により、本作を選考委員へ推薦作として提示する。
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作品データ
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作成日時 2019-12-12
コメント日時 2019-12-12