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心中に予告、心中に遅刻
駅前の来来軒で ぶどうパンを三斤買って その重さに 前のめりになりつつ 足早に歩く パンと私を 天秤にかければ 明らかに わたくしの方 が 重い ぶどうパン三斤で 沈むか この身体 夕べ、スマホが けたたましく鳴って 『明日心中を決行する』と メールが来た。 今年に入り二度目の 決行予告 (23:08) かったるい 日時:明日 場所:川 参加人数:2人 持ち物:水着 ぶどうパン三斤 備考:雨天決行だよん だから何で ぶどうパン 水着もこれ相当おかしいよ、 などと返したところで 返信は無い。 2時間ほど歩いて 街外れにある森の 階段を 16段上って87段降りた 濃紺の改札を通り 地下鉄に乗り込むと ワカメが車両狭しと 生い茂っていた 利用者の立場に 全く立っていない 運営ぶりである 吊り革のように ぶら下がる 酸素ボンベを 口に当てると 浮き上がらないように両手で しっかりとパイプを握った 海の真ん中に川は無いと思う 海の真ん中に川は無いと思う! 階段を87段上って16段降りるべきだった? ワカメが頬をなでる 大きな黒い影が 窓の外を通り過ぎていった (15:08) 「まだ?」 「遅いよ」 「今日はもう止めるよ」 そう言い残して スマホが先に水没した。
心中に予告、心中に遅刻 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 957.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2017-07-01
コメント日時 2017-07-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 0 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
しんちゅう、しんじゅう・・・相手が、もう死んでしまいたい、という深みにとらわれて、浮上できないでいるとき・・・自分の心を引き裂いて分け与えれば、それで済むのか?(済まない)、相手は、生きたい、のだから、共に・・・ そのどうしようもなさに、生きることそのものの「ままごと性」というのか・・・そこに位相をずらすことで、ギリギリのところを共に回避して浮上(停滞しているけれど)していく、そんなふたりの、解放されたとは言いがたいけれど、深みに引きずり込まれずに済んだ、という回避の流れを感じました。 いつのまにか海に水没している列車のイメージは、しばしば海や水で象徴される無意識界への沈潜を物語化していく過程のように思われました。 言葉のリズムや語感が巧みですね。読む楽しさがそこに入ってくる。ぶどうぱん、という音の楽しさ。イッキン、はきつい、ニキン、は物足りない、サンキン、静かだけど安定していて、撥音もないし、柔らかすぎないし・・・言葉や音が先にあって、良い意味で戯れながら、深刻になろうと思えば、とことん落ち込むことの出来る事象を、軽い質感の物語に置換していく。そんな、物語化への意欲を感じました。 平田俊子さんの面白さに通じる路線だなぁ、と思いつつ。
0花緒さんへ 初めて投稿致します。どうぞよろしくお願いします。大変丁寧な評をありがとうございました。 もしも「心中に遅刻」したらどうなるのだろうという発想をベースにして書いてみました。 おっしゃる通り歩き始めたところから、もう何かが変なのです。 そのおかしさは修正されぬまま、海に突入します。 どなたがが無意識の世界にとおっしゃっていましたが、本当ですね。それが一番近いです。 「シリアスなことを語っているのにシリアスにさえなれないこと」 これは現代にはびこる病でしょうか。うまく表現出来たならうれしいです。 感想をお寄せいただきました方々、少しずつ返信致します。すみません。
0静かな視界さんへ 御指摘のところは、前半部とのつながりを考えてもやや不自然になってしまったかなと思います。 本題はどちらかというと後半部にありますので。 無意識の世界に入っていく感じをもう少しスムーズに表現出来たらと思います。 ありがとうございました。
0まりもさんへ 「いつのまにか海に水没している列車のイメージは、しばしば海や水で象徴される無意識界への沈潜を物語化していく過程のように思われました」 ここは自分ではあまり意識せずにいたので、なるほどと思ってしまいました。 分かりやすいことは分かり難いこと、分かり難いことは分かりやすいことであるとすれば、トリセツのように全てを分かりやすくしてしまうのは、親切ですが詩としては味気ないものになってしまうのかなと思います。 突然パズルの盤上に立たされる、そのいつからが脳内の景色なのかということにこの海のイメージはつながっていくと思いました。 お読み下さりありがとうございました。
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