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私のしるし
この部屋の小さな窓から 歓楽街のネオンの光が差し込む頃 彼は帰ってきてくれます 私がちゃんとしていれば 温かくて美味しいごはんを 食べさせてくれるし 私が好きな本を 綺麗な声で読んでくれます 私はこの幸せを 誰かに伝えたいのですが そうすると もう会えないんだそうで 昼の 孤独な時間はひたすら 彼との思い出に浸るのです 彼の匂いに包まれれば たちまち深い眠りに落ち すぐに朝となりました 私のからだには しるしがひとつ 日にちが経って 消えてしまっても 次の日の朝には また違うところに しるしがひとつ ひとつ、ふたつと 数えていくうちに わたしは眠っていることが 多くなっていました おいしいごはんも すきなほんもいらなくて 目覚めると 私は白い部屋にいました 彼の姿はなく 私のしるしも 全て消えていました 彼の匂いも気配もない この白い部屋で 私のしるしは ただの痛みでしかなかった 快楽を与えつつ いつの間にか 私の心身を縛り付けていただけで しるしを残すことに 何の価値もなかった
私のしるし ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1284.1
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 0
作成日時 2019-12-04
コメント日時 2020-01-05
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 0 | 0 |
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※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
蛾兆ボルカ様 コメントありがとうございます。 >ひじょうにくっきりとして印象を遺す、個性的な作品 オリジナリティを出しつつ、読者に何かしらの印象を遺すために、どのような言葉を使えばよいか、とても悩んだ作品でしたので、とても嬉しいです。 >作品の背後に感じる率直な人柄が好きとでもいうのか、あるいは、言葉から香りたつ人間性みたいなものがとても心地よいとでも言うのでしょうか。 これは私自身のことと捉えてよいのか少し迷いましたが、そうだとしたら、嬉しいです。が、時々生きづらさのようなものを感じながら生きています。 >私の好みの詩です。 この言葉がやはり一番嬉しいです。 >この詩は言葉の選び方や活かし方も、上手く、特に主題である「しるし」の不可解さも、私秘というものと神秘ということの混ざり合うようなところへ連れて行かれるような感覚を引き起こしていると思います。 私は主に抒情詩を書くのですが、どうしても、言葉が足らなかったり、読み手への配慮が足らず、読み手の想像を掻き立てるような感覚を与えるような詩がかけずに悩んでいました。 「しるし」が何であるのか、読者の方に色々と想像してもらえると嬉しいです >総じて切ない抒情を感じます。切なさが抒情として作品に宿るときに、こんなふうに一種の美を湛えるのは、イイな、と思いました。 切ない抒情を感じていただけるために、作品と自分との距離に気を付けました。実践できたようで嬉しく思います。 ありがとうございました。
0初めて読んだ時と同じく、なんとなく「アモール(エロス)とプシュケー」の物語を思い浮かべました。しかし、しるしだけつけつづけて、帰らなかったら、痛みでしかないのは辛いですね。幸せのもとが一転不幸のもとになる。不幸と言えるだけ幸せの記憶があるにせよですが。じわじわしみてくる作品です。
0藤 一紀 様 コメントありがとうございます。 初めて読んだ時と同じく、ということは、初見後、時間をおいてから再度ご覧いただいたということでしょうか。そうでしたらとても嬉しいです。 「アモール(エロス)とプシュケー」の物語を少し読みました。確かに、夫アモールの姿をみることができないこと、神と人間の禁断の愛であることなど似た部分があり、驚きました。 この詩は投稿してだいぶ経つので、この詩の意図を話しますと、「誘拐犯に恋した誘拐された娘」の物語と題して書いてみました。 歯向かわなければ、優しくしてくれる、その優しさを愛だと勘違いしてしまい、一時の愛の生活を送るのですが、彼が逮捕されてしまい、いなくなってしまってから、自分の不幸に気づくというようなストーリーです。 しるしについては色々な解釈をしていただければと思いますが、快楽と痛みも紙一重かなと。 このような経験は日常的にもよくあることなのですが、少しミステリアスに書きました。読んでいただきありがとうございました。
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