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"How They Brought The Good News From Ghent To Aix"「ゲントからアイクスへ吉報の伝え方」
I. I sprang to the stirrup, and Joris, and he; 私は鐙に跳び乗った、ジョリスも乗った、あと1人も。 I galloped, Dirck galloped, we galloped all three; 私は駆けた、ディルクも駆けた、併せて3人。 "Good speed!'' cried the watch, as the gate-bolts undrew; 「走れ走れ!」見張りも叫んだ、門の閂を上げつつ。 "Speed!'' echoed the wall to us galloping through; 「走れ!」壁も谺した、駆け抜けて行く我等へ。 Behind shut the postern, the lights sank to rest, 裏門を閉ざす背後に灯が落ちていき And into the midnight we galloped abreast. 我等は真夜中を横並びに駆けていった。 II. Not a word to each other; we kept the great pace お互い声は掛けずとも、かなりの調子を保ちつつ Neck by neck, stride by stride, never changing our place; 馬首並べ脚並み揃え、位置取り変える事もなく I turned in my saddle and made its girths tight, 鞍に収まり腹帯をきつくして、 Then shortened each stirrup, and set the pique right, そして各々鐙を引き締め、意気高く、 Rebuckled the cheek-strap, chained slacker the bit, 頬革を留め直し、はみを緩めに鎖に繋ぎ、 Nor galloped less steadily Roland a whit. 疾駆のローランド、一々鞭を入れるまでもなく。 III. 'Twas moonset at starting; but while we drew near 出発は月の入りだったが、やがてロークレンをかすめる頃、 Lokeren, the cocks crew and twilight dawned clear; 雄鶏が時作り薄明は夜明けになり、 At Boom, a great yellow star came out to see; ブームでは、大いなる黄色い星が見えるようになり、 At Dffeld,'twas morning as plain as could be; デフェルドでは、この上なく明るい朝となり、 And from Mecheln church-steeple we heard the half-chime, ミシュリンの教会の尖塔からは30分の鐘が聞こえてきて、 So, Joris broke silence with, "Yet there is time!'' そこでジョリスは沈黙を破り「まだ時間はある!」と。 IV. At Aershot, up leaped of a sudden the sun, アエルショットでは、ぴょこんと太陽が飛び出ると、 And against him the cattle stood black every one, それに向かって牛たちが皆立ち塞がること黒々と、 To stare thro' the mist at us galloping past, 駆け去る我等を霧を通してじっと見守る、 And I saw my stout galloper Roland at last, そして私も頑健なる乗騎ローランドの様子を見れば、 With resolute shoulders, each butting away その断固たる肩は交互に突き上がり The haze, as some bluff river headland its spray: 朝靄は断崖絶壁の如くに広がり。 V. And his low head and crest, just one sharp ear bent back 馬首たてがみ低くして、鋭い耳は片方丸め For my voice, and the other pricked out on his track; 我が声聞きつつ、もう片耳は行手に拡げ And one eye's black intelligence,---ever that glance その片目は黒く賢く、見たこともないほどで O'er its white edge at me, his own master, askance! もう片方は白目のふちで、主人である私へ横目をくれて。 And the thick heavy spume-flakes which aye and anon 濃く重い息吹は短く絶え間なく His fierce lips shook upwards in galloping on. 猛る口元衝き上げつつ疾走し続け。 VI. By Hasselt, Dirck groaned; and cried Joris, "Stay spur! ハッセル近くで、ディルクが呻く。ジョリスは叫ぶ「拍車は止せ!」 "Your Roos galloped bravely, the fault's not in her, 「お前のローズは善く駆けた、その子は悪くないぜ。 "We'll remember at Aix''---for one heard the quick wheeze 「アイクスでまた会おう」という、相手が聞くのは激しい喘ぎ Of her chest, saw the stretched neck and staggering knees, 牝馬の胸から、と見るやその首伸ばし膝はふらつき、 And sunk tail, and horrible heave of the flank, 尻尾も垂らし、脇腹は恐ろしいまでに激しく喘いだ、 As down on her haunches she shuddered and sank. 尻を下ろすや牝馬は震え、沈んでしまった。 VII. So, we were left galloping, Joris and I, もはや残るはジョリスと私しかなく、 Past Looz and past Tongres, no cloud in the sky; ルーズを過ぎトングレスを過ぎ、青空に雲一つなく、 The broad sun above laughed a pitiless laugh, 頭上にデカい太陽が無慈悲な笑顔で笑い、 'Neath our feet broke the brittle bright stubble like chaff; 足元に脆く輝く切株が籾殻のように砕け。 Till over by Dalhem a dome-spire sprang white, デルハムから外れた辺りでは綿毛が白く弾けた、 And "Gallop,'' gasped Joris, "for Aix is in sight!'' そして「駆けろ」とジョリスが喘ぎつつ、「アイクスが見えてきた!」 VIII. "How they'll greet us!''---and all in a moment his roan 「どれだけ喜んでくれるかな!」と彼が呟いた正にその時 Rolled neck and croup over, lay dead as a stone; 首が回り咳込むや、倒れ伏すこと石のよう。 And there was my Roland to bear the whole weight かくて我がローランド、此処に全ての重荷を担うに至る Of the news which alone could save Aix from her fate, 唯一無二の吉報を、アイクスをその不運から救うことのできる。 With his nostrils like pits full of blood to the brim, 鼻の穴は血の詰まった地獄の如くに押し開き、 And with circles of red for his eye-sockets' rim. 眼窩の縁は紅い輪にして。 IX. Then I cast loose my buffcoat, each holster let fall, そこで私もコートは脱ぎ捨て、ホルスターなぞ両方とも落ちるに任せ、 Shook off both my jack-boots, let go belt and all, 軍用ブーツも放り出し、ベルトも何もやっつけて、 Stood up in the stirrup, leaned, patted his ear, 鐙を踏んで立ち上がるや身を乗り出し、馬の耳をパタパタしてやり、 Called my Roland his pet-name, my horse without peer; 我がローランドの愛称を呼ばわった、振り向きもしない我が愛馬を。 Clapped my hands, laughed and sang, any noise, bad or good, 手を叩いて笑った、歌った、下手も上手も知るものか。 Till at length into Aix Roland galloped and stood. 残るアイクスまでの道程をローランドは駆け抜けた、そして止まった。 X. And all I remember is---friends flocking round それから私が覚えているのは……友人達が群がって As I sat with his head 'twixt my knees on the ground; 私は地べたに膝を丸めて馬の頭の横に座って。 And no voice but was praising this Roland of mine, 声という声が私のローランドを褒め称えるばかり、 As I poured down his throat our last measure of wine, 私は私で彼の喉にワインの残り1杯を注いでやったり、 Which (the burgesses voted by common consent) それは(全員一致で選ばれた市民達にとって) Was no more than his due who brought good news from Ghent. ゲントから吉報を齎した彼には当然の報酬であった。 by Robert Browning 1843(翻訳:萩原學)
"How They Brought The Good News From Ghent To Aix"「ゲントからアイクスへ吉報の伝え方」 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1849.6
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 10
作成日時 2019-11-27
コメント日時 2019-12-10
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 4 | 4 |
エンタメ | 1 | 1 |
技巧 | 5 | 5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 10 | 10 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 2 | 2 |
エンタメ | 0.5 | 0.5 |
技巧 | 2.5 | 2.5 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 5 | 5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
これも『エルヴェ・リエル』と同じくブローニングが書いたバラッドなのですが、昔話ではなく、自分のことのように語っています。地名などは見たまま音写したので、発音は違うかも知れません。乗馬もした事ないので、勘違いもあるかも。 そもそも good news の内容には一切触れてなく、何をそんなに慌てていたのか腑に落ちないし。 dome-spire は直訳すると「丸い尖塔」で、宗教的意味もあるかも。ですが形態的にタンポポの綿毛なので、その辺は略しました。
0お邪魔します、とお邪魔に来たのは良いけれど……。 なるほど、翻訳ですか。英語は中1の教科書で挫折しているわたしにはコメントが書けそうになくて、残念。まず、元の作品を味わえないことには、どうにもこうにも、ですからね。 訳された翻訳作品も、内容は元の作品に沿っているわけで、内容を評しても作者さんが不在じゃ仕方がないですし。翻訳における表現方法に対して感想を書きたい所なんですが、英語がわからないことには、どこからどこまでがオリジナルの表現なのかがわからない。 うーん、何となくですけども、原作に囚われすぎず、もっと自己表現を入れてみても良かったんじゃないかなって思いました。翻訳としては正しいのかもしれませんけどね。 申し訳ないです。これは英語に強い方のコメントを誘うために、トップへ押し上げるだけになりそうです。 『Hervé Riel エルヴェ・リエル』のほうは臨場感がありますが、こちらの方が言葉の扱いが凝っているように感じました。 これからの時代の流れを見れば、英文を用いた作品も増えていくのかもしれませんね。うーん、英語かぁ。学校では全く覚える気がなかったですし、覚えられるとさえ思わなかった。 まあ、わかんないってだけじゃ面白くないですから、ちょっとだけ。 翻訳された作品を参考にしながら、わたしも猿真似で1だけ翻訳してみました(1だけでいっぱいいっぱいでした)。元の作品が韻にこだわってる事だけはわかったので、わたしも字面にこだわってみました。他の手法はわたしの語学力じゃ読み取れなかったので。 1, 私が鐙に足踏み飛べば、ジョリスも続き、足しての1人。 かけた私に、ディルクを足して、これで3人揃い踏み。 「そーれ走れい!」声張る見張りが、門の閂開ける間に 「走れい!」木霊が壁から帰って、我らは外へと駆けて出る。 裏門が背後で閉鎖、灯りも沈下。 深い夜の真ん中を、横にならんで突き進む。 詩と言うよりは言葉遊びになってしまいました(笑)元の作品の雰囲気を無視してますし、翻訳とは言えないでしょうけど、個人的にはこういう遊びは好きですね。
0有難うございます。僕も英語は喋れないし、第2外国語も取った筈なのに覚えてません(笑 なるほど… 鐙とは鞍に提げる踏み台らしいので「鐙を踏んで跳び上がった」とするのが正しいのでしょう。ただ、それだと冗長だし。into the midnight だから「深夜の中へ」だけど、…有りがちじゃね?と思ってしまって。 『エルヴェ・リエル』の紙芝居的構成に対して本作は、乗馬のリズムに合わせたのか、最後まで韻律的で。かなり意識して逐語訳した積もりだけど、その分日本語として不自然ではありますね。もう少し練らないと。 ただ、自分の発想にないものに取り組むのが愉しくもあり、って自作は未投稿だったか。月が替ったら新作投げますね。
0翻訳詩は翻訳者が原文から感じとった詩情を日本語で再構築すると思っているので、必ずしも原語が読めなくても楽しめると思ってます。そう考えると別物だと考えてもいい気がします。ノーベル文学賞をとったタゴールはベンガル語の定型韻文詩を英語に訳す際には韻文よりも散文調にしたようですし。翻訳される言葉にあった、つまりこの場合は日本語で萩原さんが感じられたものを描かれるのをみてみたい気がします。 エルヴェ・リエルとまた違って原語がわからないのでなんですが確かに筋立てよりも言葉のリズムを意識した作品に思えました。私のローランドを褒め称えるばかり、辺りはやはりユーモアがあります。それは小気味良いですね。
0大変興味深い試みだと思いました。ブラウニングの詩は赤毛のアンの最後に引用されていた世は事もなしのフレーズぐらいしか知らなかったのですが、こうやって対訳で示されれば、何か英詩の教養が深まった仮名の様な気がするのです。ローランドと言うと円卓の騎士の様なそんな気もするのですが、詩的イメージは深いと思いました。
0英語版Wikipediaに、この詩の記事があったのですが。史実ではなく、フランダース年代記とかによくある話の印象に拠って創作したものとか。 ゲントはベルギー北部、エクス Aix はドイツ西端アーヘンのことらしい。イギリス国内の話と思っていたのに、とんだホラ吹きだった…
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