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夢見る蕾の夜
夜というものが一つの言葉になってこの街を漂う 私たちというものが一つの言葉になり 夜。私たち。台風や積乱雲に傷つけられるこの街 私は雷の上を疾走して音を鳴らし 私たちの中で、命のふりをしている 気づいてはいけない また気づかれてはいけない 手の冷たい人は心が暖かいの。 きみの口癖、馬鹿みたいに信じ、手は水につけたままだ。だんだんと体も寒くなり、私は風邪をひいてくしゃみをするだろう。くしゃみにはばい菌と呼ばれるものが含まれていて、それが本当の私だよと言い訳すること 気づいてはいけない また気づかれてはいけない 雷と雨が反対になってしまった台風 荒れ狂う音の中だから きっと叫んでも誰も気づいてくれないだろう ただ走って ホップステップジャンプして 足元で雷が落ちているけど、私には関係ないね 手が濡れたまま私は私たちの間を走り抜け 何かを殺した ひとりのこども 貧しく、親に捨てられ、誰にも知られずに消えた 私の雷に打たれて死んだのだ ひとつぶきりのかなしみ すらも感じられなかったあのこどものこと 気づいては いけない アホくせー 手が濡れているからまた風邪をひいて 命のふりをしている 気づいてはいけない また気づかれてはいけない ただ朝の新聞を配達する貧乏人 見送り 昨日の台風は酷かったわ 涙して 彼らの命はひとつぶの涙になる 死人 ひとつの言葉になる 気づいてはいけない また気づかれてはいけない いつか、必死に浸していた手が、草花のように水を吸い上げ私がすくすくと成長すること 手を伸ばせば月に届くような高さから世界を見下ろし 包み込んで巨大な花を咲かせる。重力は私のせいで混乱し、全てが引き寄せられ ぶつかり こわれて うまれる 夢を小さい頃からずっと見ている きっと私は命ではない ただ 名前があり あのこどもには名前すらなかったみたいに 言葉になれずに消えていった感情が すべて、透明な色をして私の前にあらわれ 手探りで抱きしめようとすると 手が冷たいと囁かれ、みんな逃げて行きました 私は 透明であったのが彼らでなく私であったこと 気づいてしまうのでしょう 雷と手を繋いで街を歩き 何人もの人々を殺して行きます 100人くらい殺せば 名前が知れ渡ることもないでしょう ただ私の名前があり 言葉があり 呼ばれ 憎まれ 涙を流して 命のふりをして きみだけが本当の友達と まだ馬鹿みたいに手を水につけて 今日も 死んだような顔で 生きるふりをして いつか この街に大きな花を咲かせること すべてをこわすこと 夢見ている。
夢見る蕾の夜 ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1433.0
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2019-11-09
コメント日時 2019-11-09
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 1 | 1 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 1 | 1 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
着想や発想が独特で、精神性を求めているように感じますね。 >アホくせー この一語はかなり強い一語だと感じました。それこそこの詩の雰囲気を全て叩き壊す「雷」のように(それが良い事かどうかは別として)。 自分が良いと思っているものを、自分で否定するような。あるいは、いけないと思っていることに惹かれるような、自己矛盾感。そういう印象を受けます。 >夢見ている。 で結ばれていますし、タイトルの「蕾」というように、まだ花開く前という感じですね。 ただそれと同時に、今が一つの岐路というか分水嶺というか、方向を決めていく時なのかなとも、僕は感じました。 願わくば、その蕾が禍々しい花を咲かせないことを。仮に禍々しくも美しい花が咲いたとき、何か悦に入らないで冷静に見つめられることを。精神性の希求が、高潔さや神聖さのような高尚な方に向かうことを。 老婆心ながらそんなことも思いました。
0紗一さん わあ、紗一さんの指摘、あまりにもその通りですね……。この詩も、もっと見直してみようと思います。それでこれからは、少し長い詩を描く時は、冗長になってないかチェックするようにします。描きたい欲に抗うぞ。ありがとうございます。 トビラさん !! 自己矛盾感。そんな素敵な言葉で私の言葉を表現してくれて、いまとても嬉しいです。うれしいです。ありがとうございます。
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