別枠表示
イメージ・ザ・プラネット
成田 中国人の少女は放射能の影響を心配した母親と携帯で話している。 冬の陽光が差し込む国内線との連絡バス。関西訛りの彼女の声に危機感は無く、お節介な親への嫌悪感が混じるものの、その響きには郷愁に駆られた寂しさが有る。 上海 スモッグは今日も濃霧のように立ち込め、少年はマスクと眼鏡をかけて家を出る。 シャネルの店舗の前にたむろし携帯を弄る友人に声を掛け通学路に付く。その途中、コンビニに寄り煮崩れた黒いおでんに顔をしかめる。 パリ ベビーカーの中で愚図る赤ん坊と、覗き込み笑顔であやす母親。ブロンドの髪が乾いた風になびく。ブランドのバッグからハンカチが落ちる。 その光景に通り掛かった移民の黒人が微笑み、柔らかな布を拾い上げ彼女に手渡し道路工事の仕事へ向かう。 シチリア アフリカからの難民の嘆きを馬鹿にする子供たち。 パチンコ玉で射抜いたサボテンを空に掲げ、その穴から飛行機を見上げる。メッシーナ海峡に橋が架からない理由を噂し合いながら、夕飯の時間を待つ。 ナイロビ 夕餉に如何と、パンを売る少女。常連客は散歩の休憩がてらに店番を変わる。 自宅から持ってきたフラフープの記録に挑戦し、飽きればテープを貼り色を増やす。はるか上空を戦闘機が飛んでいく。 ニューヨーク 地下鉄で歌う物乞いはかつての歌手志望。確かな美声が掻き消される。 行きかう人の群れに望むのは、賞賛では無く金銭。日々を生きる為に、目指した夢は生活の為の手段となった。 もう少し身近な話をしよう。 青森 ギターを担いだ彼氏を見送る女子高生。 生きる目標を持つ年上の少年への憧れと、寂れた地元への嫌悪感と愛情に涙する。 名古屋 担いだバックにナイフを偲ばせる少年。 眼は虚ろで、足取りは覚束ない。始業時間を大幅に過ぎ校門の前に立つ。片手には詩集が握られている。 なぁ、これが俺のセカイだ。 偉そうな批評家は、311以降人々は自らの世界で精一杯になったと言った。 全く、そう思うよ。 俺のセカイは、俺が観てきた事をドラマティックに仕立て上げただけだ。流行りのエンタメ超大作。シネマテッィックユニバースさ。 だがな、確かに繋がってるんだよ。 インターネット、内向的だと言うがその向こうには何億もの存在を感じる。老人共が着いて来れない時代に生きてるんだ。 このセカイは美しくないかも知れない。絶望の暗闇が続き、希望なんてどこにも無いように感じるかも知れない。俗悪な社会と醜悪な現実の壁を乗り越えられないと感じるかもしれない。それは正しくて、そして間違いだ。だから俺たちは半径500メートルのセカイを生きて死んでいく。 遠い空の向こうの息吹を、相容れる事の無い思想を、その貧しくも豊かな生活を、思い描けば俺たちは手を取り合う事が出来るんだ。 想像しろ、確かに俺のセカイとあんた達の世界は繋がっている。 大阪 寺山に憧れた少年は、今日も野外劇の夢を観る。
イメージ・ザ・プラネット ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 914.7
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 2
作成日時 2017-06-26
コメント日時 2017-06-26
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 2 | 2 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 0 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 2 | 2 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 2 | 2 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文