博愛主義 - B-REVIEW
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ことばという幻想

純粋な疑問が織りなす美しさ。答えを探す途中に見た景色。

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博愛主義    

ここから話すことは全部嘘ですが 私は、出会う人みんなを好きになります それは、人のいいところを見つけられるということでもあり また、特に理由もなく、漠然と人を好きになる空気がそこに膨らんでいるような気もします 光がそこに降り、また注いでいるような気もします  ことば あなただと思っていたものが ただのわたしに焼き付く光だったなんて            振動だったなんて 考えたくもないことです。二つの小さな窓に、宝石みたいにしまっていたその光が、輝いて白色になるとき。それは生理的現象でしかないのに、血がそこに流れているのとなんら変わりないのに、命の素晴らしさを、あなたに説教したくなってしまうのは、愛しているからでしょうか  わたしが それを思って毎晩泣いているからでしょうか  わたしにもなりきれない屑が その涙で洗い流され、白色の愛だけがそこに残っている気がする (血が流れている 熱く、熱くもえる愛がわたしに差し込まれ、そこから赤い血が流れている。わたしは冷たい体温をしているはずなのに、血が流れて、それだけが赤くそれだけが熱くそれだけが痛かった。白く、冷たく白かったわたしを熱く赤くもえる愛が刺し、そこから赤い血が流れている。わたしは、わたしの体温がそこから流れてゆくのを、わたしの命がそこから押し流されてゆくのを泣きながら見つめていた。さなぎのままにわたしは刺され、赤く熱くもえる愛に刺され血が、赤い血がまた流れてやがて血は全て流れ落ちてしまった。涙が残滓を洗い流し、白色の愛と血の通らない欲望だけがそこに漂っている。やがて血は全て流れ落ちてしまった。涙が残滓を洗い流し、血の通らない愛と白色の欲望だけが幽霊のように彷徨っていた。 幽霊のように彷徨っていた)  ことば  ねぇ、 わたしは誰にでも染まれますよ 白色ですから誰でも、みんな、愛していますよ と 叫ぶと、騒音だと、録音して警察に通報するぞと隣人にどなられ、わたしはその意見をもっともだと思いました。とくに深夜の音がひどいそうで、わたしは静かにお茶の間に、電気もつけずにじっと正座している 夜の間はずっと 暗がりにいるのだと知った 白ですらこなごなの灰に、そしてだんだんと黒に 変わってしまうのだと知った 涙のような滝に 流され、流され、流され。白色の愛だけがそこに、白色の愛だけが、白色のそれは わたしは あまりにも美しい、その光で揺らめいて見えただけの蜃気楼でした幽霊でした わたしは わたしは白ですらなく ただ赤色の血だけが足りなかった  屑にすら なれぬような人間です。わたしは、あなたの光に誘われた幽霊でした。まぶしいほどの白で、誰でも誰でも誰でもいいようなくだらない博愛で、 屑でもいいからなにか実体がほしくて ただただ血だけが足りませんでした。


博愛主義 ポイントセクション

作品データ

コメント数 : 8
P V 数 : 2878.2
お気に入り数: 1
投票数   : 0
ポイント数 : 13

作成日時 2019-11-02
コメント日時 2019-11-30
#テキスト #アドバイス募集 #受賞作
項目全期間(2025/04/10現在)投稿後10日間
叙情性33
前衛性33
可読性22
エンタメ00
技巧33
音韻11
構成10
総合ポイント1312
 平均値  中央値 
叙情性0.80.5
前衛性0.80.5
可読性0.50.5
 エンタメ00
技巧0.80.5
音韻0.30
構成0.30
総合3.33.5
閲覧指数:2878.2
2025/04/10 01時54分41秒現在
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    作品に書かれた推薦文

博愛主義 コメントセクション

コメント数(8)
エイクピア
(2019-11-02)

告白体の詩と言うのか、読み応えがあり、自制があり、抑制された詩表現の中にも、狂気の萌芽すらあり、詩の濫觴だと思いました。もちろんこれが詩ではないと言いたいのではありません。やはり詩を追及するとその起源を追うものなのかもしれません。血が流れていると言う部分。8行の散文詩。血の通らない愛と白色だけが幽霊のように彷徨っていた。共産党と言う幽霊ではもちろんないでしょうが、実態を求めての彷徨だったのかもしれません。

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夢うつつ
(2019-11-03)

エイクスピアさん 感想ありがとうございます。抑制、その中での狂気の萌芽、そう言った感触を目指して書いた詩でしたので、伝わったみたいで嬉しいです!ありがとうございました

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夏野ほたる
(2019-11-25)

あなたやだれかの愛がほしい。けれどそんなまがいものの博愛主義では愛に温められることはないのですね。愛にさまよう幽霊に透き通る血を通わせて、おだやかな共依存をさせてくれる人が現れることを祈ってしまいます。 そして、( )の部分は熱い白い赤いが幾度も出てきて間延びしているような気もします。排除とまではいかなくても、似たような言葉を大掃除したら内容を損なわないままより感情が浮き出てくるとおもいます。

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夢うつつ
(2019-11-25)

くだらない博愛、というのは、私の誰かに向ける愛と、誰かが私に向ける愛両方にかかっています(意味は全く違いますが) 夏野ほたるさん ()の部分は、いったん描き終えてから、付け足した言葉たちで、私がこんな風になってしまった経緯を書こうとしたのですが、あとから作為的に何かを加えると、やっぱりあまり良い影響は出ないですね……。ありがとうございました。

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萩原 學
萩原 學
(2019-11-26)

「エピメニデスのパラドックス」または「ウソつきのパラドックス」というのがありましての。 “クレタ人エピメニデスは宣った。『クレタ人は皆ウソつきで御座る!』” 冒頭で思わず期待したのですが、取り上げて頂けなかったようで。そればかりが心残りにございます。

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夢うつつ
(2019-11-28)

萩原 學さん 感想ありがとうございます。冒頭1行がそれだけで独立しているようで、実は全体にかかっているようにと書いたのですが、余分なノイズになる表現だったのかもしれません。ありがとうございました。

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5or6.(ゴロ)
(2019-11-29)

赤と白という言葉が出ていたけど、ただ赤い、白いと書いてあるだけで色のイメージを伝えるような表現が少ないように感じました。

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夢うつつ
(2019-11-30)

ゴロちゃん。さん この詩で、赤色、白色というのは、それぞれの愛をより対比するためのもので、愛のイメージを表すものだったのですが、確かに「赤色、白色」とだけ言われても、ピンとこないのかもしれません。ありがとうございました。

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投稿作品数: 3