別枠表示
DEAD COPY
私は嘔吐する 夕飯の鮭、米、葉、人参、大根、ビール、貴方への愛という名の腐敗した塊 嘔吐する まるで私が抜け出ていくみたい 喉奥深くに挿し込んだ指の爪の先が 柔らかい粘膜を引っ掻いて傷つけていく それでも執拗に私は喉の奥を掻き回す 私が空になる 身体は忙しなくえづき ぐちゃぐちゃの半固形物質を吐き出し続けながら 涙の溜まった目で 私は 私が空になるのは良いことだとぼんやり思う それがどういう衝動なのか 私には判らない ただ、私は私の中に埋まっている感情も 思いも 心も 私自身も 私自身を 引っ掻き回して ぐちゃぐちゃにして 吐き出したくなってしまう 凡て 私を空にしたい 私の中の凡てを消したい ようやく胃の中が空になって来て 私は えっ えっ と吐き出す動作を続けながら それでも 口からは透明な泡立った液体以外なにも出なくなる と ふぅ と 一呼吸おいて トイレットペーパーを回し取り、汚れた口元と手を拭う 私が私である意味は確かにあって それは決して間違いでは無くて 一歩一歩進んで行くべき場所でありものであるのだけど 手に入らないものは多過ぎて ぎりぎりに傷ついた私の素足はもう震えていて そうすると私は目を綴じて 凡てを失いたいような壊したいような幼い衝動に襲われてしまって 甘えているんだなぁと思って 瞑った目を更にぎゅうと瞼を強く合わせて 瞼の裏の暗闇に光がちかちかしているのを眺めて 悲しいとしたら こんな感情? なのかさえ 判らないままで 君を浮かべる 何度でも君を浮かべる と 私は 苦しくてたまらなくなってしまう のは 凡ては勘違いと嘘偽りに過ぎないのに 過ぎないから って それも辛くて 繋ぎ合わせた手足のパーツに 縫い合わせる翼 あぁ、だって 、 嘘だよって 私は笑って無いのに鏡の中の私は笑ってる 嘘、 私は笑ってるのに鏡の中の私は笑って無い から 貴方を何度でも描いて 描いて 描いて 描いて 描いて 凡ての人に対する憎悪と哀れみがふいに ふいに そんなことはどうでも良いのに 願わずに願いながら ただ歩いていく 生き人形達の 優しい嘘 を 壊したくなる そんな そんな夜 獣の巣の前に私は立ち尽くしていて 唸り声を聴いて ぼんやりと足が進まなくて でも 尻尾は少し揺れてしまって あぁ、私なんだなぁ、て 獣の巣からは香ぐがわしい 土の香りが流れて来て 私は少し 濡れてしまう 嘔吐したげろで汚れた頬を洗面所で丹念に洗い タオルで乱暴に拭う ふと見つめる鏡の中の私を見つめる 獣の巣 唸り声 懐かしい土の香り 裸足で踏む黒土 私は私の頬を拭いながら 獣 獣 と 胸の中で呼びかける 立ち竦んだ 足 吐いていたから 痛い喉 ぐるぐると巣の中から聴こえて来る 飢え どうか どうか お願い 私を食べて
DEAD COPY ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1709.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 3
作成日時 2019-10-29
コメント日時 2019-11-01
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
---|---|---|
叙情性 | 3 | 3 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 3 | 3 |
平均値 | 中央値 | |
---|---|---|
叙情性 | 1.5 | 1.5 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 1.5 | 1.5 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
何となくふと捨身行を思い出しました。自分の身を虎に食わせるというやつです。突飛な空想かもしれませんが、何かこの詩の衝迫みたいな感じは捨身行を私には想起させました。
0なかなか壮絶な描写ですね。 拒食症かと思いましたが、必ずしもそうでもなさそうな。 >私は私の頬を拭いながら 獣 獣 と 胸の中で呼びかける 何か別な存在になりたい、強い存在でいたい。 だから吐いてしまった、体を空にしてある意味清めてしまいたかった。 そのようにも読めました。
0