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キンモクセイ
昨夜の雨で滑る側溝に足を取られぬように歩いた いつも通りに甘い香りが肺を満たす 朝の道 脳裏に 蘇った ものは 見ないふり 土砂降りが叩きつけ霧のような黒の中 街灯の白がいやに反射する午後5時 前かがみ下を向いて歩いてみれば 道を埋める橙の小さな亡骸たち 雨に打たれ灰色にくすんでいる 胸を満たし呼吸を平静でなくした あの香りはもうない 思わず見上げた イチョウではないけれど母なる木は 悲しみにざんざんとその身を揺らし ただひたすら 泣いて 泣いて 泣いて しかし来年の秋にはまたたくさんの子らを腕に抱える いくら嘆こうと自然の理というように (きっと「貴女」も そうなんでしょ?) それでも今は私とともに泣いてはくれませんか 去年の過ちに 白く柔い体温を求めてしまった愚かさに それでも今はこの雨に隠してはくれませんか 未だ「貴女」を求めてしまう醜い愚かな女を この灰色となった世界からあふれ出る涙を
キンモクセイ ポイントセクション
作品データ
P V 数 : 1350.5
お気に入り数: 0
投票数 : 0
ポイント数 : 8
作成日時 2019-10-25
コメント日時 2019-10-26
項目 | 全期間(2024/11/21現在) | 投稿後10日間 |
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叙情性 | 8 | 0 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合ポイント | 8 | 0 |
平均値 | 中央値 | |
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叙情性 | 8 | 8 |
前衛性 | 0 | 0 |
可読性 | 0 | 0 |
エンタメ | 0 | 0 |
技巧 | 0 | 0 |
音韻 | 0 | 0 |
構成 | 0 | 0 |
総合 | 8 | 8 |
※自作品にはポイントを入れられません。
- 作品に書かれた推薦文
香りと記憶が繋がること、ありますよね。 読み手としては、木がキンモクセイなのかイチョウなのか判断しかねて5回くらい読みましたが 人物が実際に(心で)見ているのは木ではなく「貴女」であると理解したとき、物悲しい気持ちになりました。 少しでも汲み取れていれば幸いです。
0みつきさん、コメントありがとうございます! えーーーー・・・と、確かに、見ているのが「貴女」であるという解釈はとても正解です(私的に)汲み取っていただけて幸いです!ですが、その、イチョウを出したのには別の理由がありまして。 昔読んだ宮沢賢治の物語にイチョウの葉っぱが子供で、(つまり木が母)落ちる時を描いているみたいな物語を思い出して組み込んでみたくなったからです。 雨と風で揺れているさまが花との別れを惜しんでいるようだな、と。 分かりづらくてすみません!でもとにかく汲み取っていただけたこと、とっても嬉しいです!
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